2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K16959
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
山口 敬介 立教大学, 法学部, 准教授 (50507803)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 民法 / 団体 / 非営利 |
Outline of Annual Research Achievements |
今期の研究実績は、おおむね次の2点にまとめられる。 第1に、非営利団体構成員の財産的権利についての研究を進めた。まず、韓国における、非営利団体(宗中・教会等)についての戦後の判例・学説を検討し、一般に構成員が団体財産に対する権利を持たないとされる権利能力なき社団においても、団体財産に構成員が持つ利害関係の重要性と離脱原因の相当性を相関的に考慮して離脱者の利益が特に尊重に値すると評価できる場合に、離脱構成員に団体財産に対する権利が認められていることなどを明らかにした。また、韓国法・ドイツ法の検討から、非営利団体からの脱退者に対する払戻しに関する規律には、「団体の目的」についての理解が影響を及ぼす可能性があるとの考えに至った。これらの研究について、成果の一部を公刊し、また、日本私法学会で報告の機会を得た(学会報告の概要は、来期に公刊予定である)。学会報告では、団体に対する構成員の出捐の法的性質について、契約法理との比較で検討することによりさらに研究が深まりうることなど、有益な指摘を受けた。 第2に、研究対象を非営利法人・社団から、建物区分所有に広げた。近時、区分所有建物共用部分について生じた権利について、区分所有権者個人ではなく、区分所有者の団体が行使しうることを認めた判例が登場している(この判例についての研究成果を公刊した)。この判例などにみられる、区分所有者の共有に属する区分所有建物共用部分から生じた権利について、団体による権利行使を認めようとする動きは、大きく見れば、構成員に団体財産に対する権利を認めないという原則に対し、それを認める余地があることを示す近時の非営利団体法の動きと対照的な動きである。前者の動きには、区分所有建物共用部分の法的性質についての理解が影響している可能性があるとの考えに至っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前期は、非営利団体財産に対する構成員の権利についての研究を進め、予定通り、論文の公刊と学会での報告を行うことができた。また、当初の研究計画からやや考察対象を広げ、非営利団体法と関係が深い区分所有法についての研究を進め、その成果も発表できたのは幸いであった。 もっとも、後期に区分所有法についての研究に時間を割いたことにより、当初、後期の課題として予定していた、ドイツの非営利団体・法人法についての研究に、やや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、当初の計画通り、韓国・ドイツの非営利団体・法人法についての研究を進め、研究成果の公表につなげたい。 次に、今期、研究に着手した区分所有法についても、韓国・ドイツ法について比較法研究を進め、その成果を非営利団体・法人法の研究成果ともさらに比較しながら分析を進め、日本ならびに韓国・ドイツ法の共通点・差異点を析出したい。
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Causes of Carryover |
当初計画していた、海外出張を延期したこと等により、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の海外出張や、研究テーマをやや広げたことに伴って必要となる書籍費等に使用する。
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Research Products
(3 results)