2017 Fiscal Year Research-status Report
「一つの中国」コンセンサスと「平和統一」の連関ー中国の対台湾政策に関する実証研究
Project/Area Number |
15K17006
|
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
福田 円 法政大学, 法学部, 教授 (10549497)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 中台関係 / 米中接近 / 日中国交正常化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中華人民共和国(以下、中国)が諸外国の関係において台湾問題をめぐる「一つの中国」コンセンサスを形成し、それに伴い対台湾政策を「武力(平和)解放」から「平和統一」へと転換させる過程を論じる国際政治史研究である。本研究は、1970年代から80年代にかけて、中国が西側諸国との外交関係を回復し、国際的な地位を向上させるなかで、相手国の「一つの中国」への関与をどのように獲得したのかを考証する。そのうえで、そのような関与を獲得したことと、台湾に対する政策が「解放」から「平和統一」へと転換したこととの因果関係について論じたいと考えている。 本研究の軸となるのは、西側諸国との関係のなかでも最も重要視された米国との国交正常化交渉を、中国外交の視点から再検討することである。しかし、そのことにとどまらず、中国と主要な西側諸国との国交正常化交渉と対米交渉の相互連関についてもさらに考察を深めていく必要があることに気づいた。また、この時代の中国外交文書が公開される見通しが全く立たない状況下においては、米国よりも先に中国と国交正常化をした旧西側諸国の外交文書から、中国が対米交渉を頂点とする一連の西側諸国との台湾問題をめぐる交渉をどのように進めようとしていたのかを読み解く方法も有効なのではないかと考えるに至った。 こうした点に関して、平成29年度は前年度から引き続き、米中接近から国交正常化へと至る過程における米国の対中政策に関する外交文書を読み続けることと並行し、それ以外の西側諸国と中国の交渉についても、当初の計画よりも長いタイムスパンで分析を続けた。そのうち、中国とカナダの国交正常化交渉および米中接近との関連については論文をまとめ、近日中に公表できる見通しを得た。また、日中国交正常化から平和友好条約へと至る過程についても、日本の外交文書を利用して行う調査に着手した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来は平成27年度末まで取得予定であった育児休暇を、平成28年8月まで延長したことに伴い、前年度までに予定していた中国、台湾、アメリカ等での史料調査やインタビューを行うことができなかった。また、この間に中国における研究環境は大きく変化し、新たな史料の公開が望めないばかりか、インタビューも難しい状況となった。 そこで、平成29年度はまず、台湾における史料調査を再開した。国史館、国民党党史館などで、台湾のカナダ、イタリア、日本との断交、米中接近に対する対応などに関する史料を収集した。台湾においても、政権交代に伴い、国史館所蔵史料の公開方法が変化したり、国民党党史館の史料が閲覧できない状態になる可能性が出てきたりしているので、台湾における史料調査は優先的に行う必要がある。また、台湾ではインタビューを行いたい対象は定まりつつあるものの、出張できる回数の制限から、実際にインタビューを行うには至らなかった。アメリカでの公文書館における史料調査とインタビューには本年度も着手できず、次年度以降に延期することとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
本課題は、中国の政治外交史を軸としながら、中国の公刊史料、米中関係に関する米国公開公文書、関係者へのインタビューなどを利用しつつ、中国の「平和統一」提起の過程を考証するものである。しかし、上述したように、中国における研究環境が改善する見通しが立たない状況においては、これに対応する台湾側の認識や政策の変化についても研究し、最終的には米中台関係史のアプローチで「平和統一」の時代がおとずれる背景を描くべきではないかという問題意識をもつに至った。そして、そのような研究を進めるには、現在残された研究期間と予算では不十分であるため、所属機関とも相談した上で、国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)に本課題を基課題とする発展的な課題を申請し、採択された。 上記のように計画全体を見直した上で、30年度は台湾や米国における史料収集およびインタビュー調査を引き続き行うこととする。台湾では、国史館や党史館の所蔵史料にとどまらず、大陸委員会図書室などで、初期の対大陸工作に関する史料を収集したい。また、1980年代以降に対中政策に関わってきた人物、米国を中心とする西側諸国との外交政策に関わっていた外交官にインタビューを行いたい。また、30年こそは、米国における史料調査とインタビューを本格的に開始したい。その第一歩として、夏期にスタンフォード大学フーバー研究所史料室とニクソン大統領図書館を訪れ、米中接近に関する公文書の収集と整理を行う。
|
Causes of Carryover |
予定していた海外での史料調査とインタビューを行えなかったため、旅費およびそれらに伴う謝金や人件費も支出できず、次年度使用額が生じた。海外出張も徐々に行えるようになってきたため、残された研究期間で予定していた史料調査とインタビューを行いたい。次年度使用額はその際の経費に充てる計画である。
|