2018 Fiscal Year Research-status Report
「一つの中国」コンセンサスと「平和統一」の連関ー中国の対台湾政策に関する実証研究
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15K17006
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
福田 円 法政大学, 法学部, 教授 (10549497)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 中台関係 / 一つの中国 / 中国外交 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中国が諸外国の関係において台湾問題をめぐる「一つの中国」コンセンサスを形成し、それに伴い対台湾政策を「武力解放」から「平和統一」へと転換させる過程を論じる国際政治史研究である。本研究の軸となるのは、西側諸国との関係のなかでも最も重要視された米国との国交正常化交渉を、中国外交の視点から再検討することである。しかし、そのことにとどまらず、中国と主要な西側諸国との国交正常化交渉と対米交渉の相互連関についてもさらに考察を深めていく必要がある。また、この時代の中国外交文書が公開される見通しが全く立たない状況下においては、米国よりも先に中国と国交正常化をした旧西側諸国の外交文書から、中国が対米交渉を頂点とする一連の西側諸国との台湾問題をめぐる交渉をどのように進めようとしていたのかを読み解く方法も有効なのではないかと考えている。 こうした理解に基づき、平成30年度は当該時期の米国の対中政策に関する外交文書を読み続けることと並行して、西側諸国と中国の交渉についても分析を続けた。そのうち、中国とカナダの国交正常化交渉および米中接近との関連についての論文を公刊した。また、スタンフォード大学フーバー研究所のアーカイブとニクソン大統領図書館を訪れ、文革期及びその前後の中国内部文書、台湾の国民党幹部や情報機関による中国大陸関係の文書、ニクソン政権の中国・台湾との交渉の前提となる調査文書などを収集した。 上記のような活動に加え、平成30年度に力を入れたのは、「『一つの中国』原則形成の国際政治史」という題目で、上記の研究の全体像に関する研究報告を行い、日本、中国、台湾の研究者たちと意見交換を行うという活動であった。一連の活動を通じて、収集した文書を読み解き、まとめる際の視点や、全体の研究をまとめる上での課題などについて、新たな知見を数多く得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の活動を通じて、平成27年度から28年度にかけて取得した育児休暇とその前後の遅れは、概ね取り戻すことができた。中国での史料調査やインタビューは昨今の情勢に鑑みて見送ったが、中国の大学を訪問し、同じく戦後史を研究する複数の研究者と意見交換をすることはできた。また、アメリカでの史料調査や台湾での史料調査は、それぞれ時間に余裕を持たせて実現でき、多くの有用な史料を手に入れることができた。また、上記の史料調査と合わせて、現地での研究報告、セミナーへの参加、現地研究者との意見交換などを複数行うことができた。ただし、昨年度から引き続き、インタビューの進捗状況は芳しくないため、次年度はこの課題に力を入れて取り組みたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題は、中国の政治外交史を軸としながら、中国の公刊史料、米中関係に関する米国公開公文書、関係者へのインタビューなどを利用しつつ、中国の「平和統一」提起の過程を考証するものである。しかし、中国における研究環境が改善する見通しが立たない状況においては、これに対応する台湾側の認識や政策の変化についても研究し、最終的には米中台関係史のアプローチで「平和統一」の時代がおとずれる背景を描くべきではないかという問題意識をもつに至った。 上記のような研究を進めるには、現在残された研究期間と予算では不十分であるため、所属機関とも相談した上で、国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)に本課題を基課題とする発展的な課題を申請し、採択され、平成30年度末からこれを開始した。そのため、令和元年度は本研究課題終了後に渡米することを前提に、中国・台湾での史料調査とインタビューに力を入れたいと考えている。
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Causes of Carryover |
平成30年1月に行った国際ワークショップの実施、及び3月に行った台湾における長期調査出張にかかる費用の見通しが立たなかったので前倒し申請をし、残額が出た。これらを次年度使用とし、令和元年度の調査出張とワークショップ開催に充てる。
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Research Products
(19 results)