2015 Fiscal Year Research-status Report
海外子会社の企業家活動を促進するマネージャーの行動と内外制度の共進化に関する研究
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15K17106
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
渡邉 万里子 福島大学, 経済経営学類, 講師 (70736701)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 制度論アプローチ / 海外子会社の企業家活動 / 探索的事例研究 / 能動的な意味付け |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は多国籍企業における海外子会社の企業家活動が国際的な付加価値活動に進展するプロセスの解明である。本研究は制度論の視点を援用し、「本国親会社の制度ロジック」「現地市場の制度的影響」「海外子会社マネージャーの行動」の相互作用パターンの抽出を目指している。 平成27年度では(1)「理論研究による研究枠組みの検討」と(2)「事例データの拡充・分析による仮説導出」が計画され、実施された。(1)では、国際経営論・制度論研究・企業家研究の文献サーベイによる未解決課題や文献展望の整理が行われた。(2)では、作業仮説を導出するための先端事例の選択と探索的な事例研究が実施された。先端事例の選択では、日経テレコン21等のデータベース、及び企業や官公庁の報告書・白書等を活用し、国外で高付加価値な製品開発活動を展開する日本企業・外資系企業のリスト作成が実施された。そのうえで、重要性が高く、調査協力が得られた企業の海外製品開発事例の探索的調査が行われた。なお、この調査では日本企業の本国親会社、及び外資系企業の在日拠点を複数訪問し、インタビューすることが計画されていたが、外資系企業の取材協力が得られなかったため、日本企業(機械・自動車・食品)の本国親会社のみの調査となった。 事例研究から明らかになったことは、海外子会社から創発された企業家活動ではその正当性を支援する組織内外の制度文脈が欠如しており、企業家活動の進展が阻まれる「正当性の危機」が発生する問題である。このような状況に対し、海外子会社マネージャーは自社の活動の正当性を事後的に構築するべく、組織内外の制度アクターに対する能動的な「意味付け」を行っていた。彼らの行動は海外子会社の企業家活動の進展を促進したことが推測される。今後の研究課題は、海外子会社マネージャーの行動と効果に関する類型化や考察を行い、仮説枠組みを構築することである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の進捗状況は概ね順調に進展している。平成27年度では、(1)「理論研究による研究枠組みの検討」と(2)「事例データの拡充・分析による仮説導出」が実施計画に含まれている。この実施計画では、①文献サーベイ、②企業事例に関する二次データベースの構築、及び③探索的インタビュー調査が計画されていた。このうち、①、②はほぼ計画通りに実施された。ただし、③に関しては、本研究が海外での製品開発活動という企業の事業活動の中でも守秘義務が厳しい活動を焦点にしていることが原因として挙げられる。また、近年ではコンプライアンス遵守の観点から企業へのインタビュー調査が一般的に困難になっていることも原因として挙げられる。このような原因によって、今年度は研究活動が当初の計画通りに進まない状況があった。具体的な問題の状況としては、日本企業の本国親会社と外資系企業の在日拠点のそれぞれ複数企業にインタビューする予定であったが、計画を実施する段階では日本企業の本国親会社のみのインタビューに変更せざるを得なかった。このような問題が生じた理由としては、外資系企業は製品開発状況の守秘義務やコンプライアンス遵守の規範が極めて強いことがある。また、在外拠点であるため、調査協力に関する承認を本国親会社に確認したり、協力者の調整に時間がかかったりしたことも挙げられる。次年度はこれらの問題点を鑑みたうえで、研究対象企業や調査方法の再検討を行い、リサーチデザイン全体の練り直しを行うことを検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度における本研究課題の推進方策は、3つの調査活動によって示される。まず、文献サーベイ、及び探索的事例調査から得られた発見を理論的に類型化し、考察を深めることである。次に、この考察結果を再度先行研究に照らして、そこから新たな仮説フレームワークを検討することである。そして、この仮設フレームワークに沿って、構造化された比較事例調査を行うことである。この構造化された比較事例調査においては、企業へのインタビュー調査(特に外資系企業へのインタビュー調査)は企業側のコンプライアンス遵守や守秘義務が原因となって、遂行が難しくなることが推測される。そのための対応策として、次の3つの対策を検討する。まず、①追加的に二次データを収集し、効率的に活用すること、次に②研究対象となる地域・産業・企業を柔軟に検討し、調査可能な企業事例から効率的に調査すること、そして③企業データの収集を行う専門業者やオンライン調査等の活用を検討することである。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、研究対象の1つであった外資系企業在日拠点から①インタビュー調査の調査協力を得られない、あるいは②企業との日程調整が長期化したことによって、計画していた調査が中止や年度を越えて延期されたという状況がある。そのため、主に計画していた国内調査に係る旅費に関して次年度使用額が生じた。このような状況の背景として、特に外資系企業は製品開発状況の守秘義務やコンプライアンス遵守の規範が強く、調査協力に積極的ではなかったことが挙げられる。また、在外拠点であるため、在外担当者に調査協力の決定権がなく、本国親会社の承認を取る等調整に時間がかかったことが挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の使用計画としては、①計画していた研究対象企業への調査協力交渉を引き続き行うとともに、研究対象とする外資系企業の重要性や業種を見直し、研究対象を広げてインタビュー調査に当たる、②企業データの収集を行う専門業者やオンライン調査等の活用を検討する、③①〜②の活動と並行して、日本企業のみを対象にしたリサーチデザインも同時に検討し、外資系企業へのインタビュー調査が順調に実施されなかった場合の対応策として日本企業へのインタビュー調査件数を増やすことを計画している。
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Research Products
(4 results)