2016 Fiscal Year Research-status Report
イノベーション活動への「専門家」の動員と組織的課題:医療機器開発チームのケース
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15K17112
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
大沼 雅也 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (30609946)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 経営学 / イノベーション / ユーザーイノベーション / オープンイノベーション / 産学連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は(1)「専門家」と企業から構成される製品開発チームが抱える組織的課題とイノベーションとの成果との関係について、仮説を構築するために探索的アプローチから事例分析と理論研究を進めると共に、(2)実証に向けたデータ収集と整理を実施した。具体的には、昨年度に続いて、各プロジェクトチームの関係者に対して聞き取り調査を実施した(計8名)。その中で、明らかにされたのはプロジェクトを主導する専門家の個人属性(専門家としてのアイデンティティのタイプや問題解決に対する志向性等)が、イノベーション活動への取り組みへの態度と少なからず関係していることであった。ただし、そうした個人属性に関する要素は、時間と共に変化するものでもあり、その変化プロセスを追う必要性もまた課題として浮かび上がってきた。加えて、プロジェクトの中核的役割を担うチームについて、その組織属性もまた重要な変数(例えばチームとしての経験等)であることが明らかになってきた。そこで、それまでの理論的枠組みについて、上記の側面を取り入れたものに修正し、検討を進めていった。さらに、実証に向けたデータ分析に関して言えば、定性的なデータ(インタビューデータ、各種雑誌、インタビュー記事等)の分析に加え、各チームによる公表論文数、特許数、製品化の有無、製品化までの期間等に関する定量情報の収集・分析も進めた。 以上が当該年度に進められた作業の中心的な成果である。なお、この成果の一部については、1本の論文および2回の海外学会発表 によって年度内において既に公開されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の作業はほぼ予定通り実施することが出来ている。もっとも、昨年度、事例調査、理論研究を進める中で、各種の概念間の関係性やその事例との対応関係について、さらなる考察が必要とされていた。それゆえに、当初の予定では、本年度は、データ分析により重きに置いた研究スケジュールに当てていたが、実際の作業は、データ分析よりもむしろ理論的な視点からの検討が中心となった。しかし、その結果も順調に得られていることから、作業はおおよそ問題なく進行しているといえる。また、本年度は論文と学会報告といった研究成果の公表という点においても予定通りのスケジュールで進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、本年度構築した理論的な枠組みに基づいて、事例に基づく実証を進める予定である。これまでに蓄積した事例に加えて、よりヒストリカルなデータ収集が可能な事例の選定を行い、各種の変化に関する仮説の精緻化および実証に努める。その成果は、理論論文として、日本語雑誌に投稿・掲載を目指すと共に、実証データも含めた集大成的な研究を、英文雑誌に投稿することを目指す。また、継続的に研究すべきテーマも見えてきていることから、来年度までの研究を土台として、さらなる発展的な研究計画を立て、その実施に向けた体制作りも進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
予定よりも旅費を安価に済ませることができたため、一部に残金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越し額については、次年度の英文校正および資料整理の人件費に用いる予定である。
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