2015 Fiscal Year Research-status Report
国際空港建設をめぐる受益と受苦の構造的把握:成田空港を事例に
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15K17199
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Research Institution | Nagano University |
Principal Investigator |
相川 陽一 長野大学, 環境ツーリズム学部, 助教 (90712133)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 受益圏 / 受苦圏 / 成田空港 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、成田空港開発をめぐる地域紛争を事例に、大規模開発プロジェクトが地域社会に及ぼす正負の影響を環境社会学における受益圏‐受苦圏モデルを援用し、実証的に明らかにすることを主目的としてきた。主な問いは「グローバル・ネットワークの構築過程において生じる社会的緊張はいかにして調停されうるのか」である。初年度には、上記の問題意識を「国際空港の建設地域で、ローカル・レベルの受益と負担は、いかなる構造を形成しているか」との具体的な問いとして設定し、空港周辺地域住民への質問紙調査の実施に向けた事前踏査を行い、それに先立って、空港建設前後の地域社会の変容に関する統計データを入手、分析し、質問紙調査の実施区域を選定を進めた。具体的には、同空港の周辺市町にかかる指定統計データ等を経年データで入手し、1966年に建設が閣議決定され、1978年に開港した空港開発プロジェクトが、周辺地域社会にもたらした社会的影響について、行財政構造、総人口、高齢化率、事業所立地、移転者数や移転先等のデータを総合的に把握した。同空港の建設にあたっては、建設事業や騒音問題によって複数の集落が無住化するなどの影響があることから、集落レベルの動向を把握する必要もあり、世界農林業センサス農業集落調査等のデータを用いて、小地域ごとの状況把握も行った。統計データにもとづいた地域状況の把握を可能にしたうえで、現地踏査を行い、近年の成田市政における中心的イシューと空港拡張への地域社会の動向について成田市議会議員にヒヤリング調査を実施し、質問紙調査の実施に向けた準備を進めてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年4月~8月は準備期間にあて、市町村資料を用いた3市町(成田市、富里市、芝山町)の地域社会構造の把握行うことができた。この点は、概ね当初計画に沿った進行となっている。その後、9月~翌3月にかけて3地域を対象とした現地踏査を行い、質問紙調査の理論モデルの精緻化をはかるとともに、調査票の原案作成に入り、各市町役場に事前の趣旨説明等を実施することも計画に盛り込んでいた。現地踏査と行政機関への事前説明は、今後の実施となる分も多くあり、費用の繰り越しを行うことで対応している。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度には、前年度に行った統計データ分析の結果をふまえ、未完了分を残していた成田空港周辺の行政機関や市町議会等へのヒヤリング調査と質問紙調査の事前説明(および選挙人名簿の閲覧等における協力要請)を行い、質問紙調査を実施することが当面の目標である。研究遂行上の課題は、質問紙調査の実施時期の見極めである。2016年度には、国政選挙等が予定されていることから、サンプリング等の手続きが可能な期間が限られるため、この点について行政機関と綿密な協議を行っていきたい。
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Causes of Carryover |
当初計画では、2015年度内に複数回の現地踏査を実施することを想定していたが、統計データ整理に予想よりも時間がかかったことから、残額が生じている。また、2016年度に質問紙調査を実施するにあたり、当初計画では2000票を想定しているが、関係行政機関との調整や、いま現在も進行している第三滑走路建設計画の動向によっては、当初よりも票数を増やす必要も出てくることが想定された。これらの理由から、初年度分の使用額を次年度に繰り越していくことが、現地情勢に合わせた柔軟な調査実施をはかるうえで有効な措置と考えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
初年度から繰り越した金額については、当初計画では2000票を想定している調査規模が、現地情勢に鑑みたうえで、想定よりも大きくなった際に使用する分として考えている。質問紙調査の対象地に設定している芝山町と成田市において、新滑走路計画における騒音区域の(2016年度時点での)予測範囲に応じて、調査対象区域も柔軟に変更していく必要があり、その際には範囲を広げる可能性が想定される。調査対象範囲の拡大が生じた場合に必要となる費用を、2015年度からの繰越金で対応していきたいと考えている。
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