2018 Fiscal Year Annual Research Report
Research on the Diasporic Experience and National Identity of Zainichi Koreans
Project/Area Number |
15K17207
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
李 洪章 神戸学院大学, 現代社会学部, 准教授 (20733760)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 在日朝鮮人 / ナショナル・アイデンティティ / 祖国経験 |
Outline of Annual Research Achievements |
・昨年度に引き続き、在日朝鮮人青年による「祖国(朝鮮民主主義人民共和国)訪問」をめぐる経験に関する調査を実施した。5名の調査対象者に対し、訪問前・訪問中・訪問後の計3回のインタビューを行った。祖国の人民によるナショナルな語りに同一化することは困難でありながらも、自らの生活世界の文脈に即して、祖国との関係性を模索しようとする様子を描出しようと試みた。 その結果、大学生であるがゆえに、進路選択をはじめとしたライフコースを構想する際に、祖国での経験を踏まえようとする点で特徴的かつ興味深い語りが多く見受けられた。また、ジェンダーやセクシュアリティに関する保守的な考え方や、民族本質主義的言説が、自らの日本社会に生活するなかで獲得したリベラルな価値観と相反するときに、祖国の社会・政治状況を踏まえたうえでそれらを理解し、「より善い生」に向けた取り組みを放棄することなく、そこに果たすべき在日朝鮮人としての役割を模索しようとする様子は、注目に値するものであった。 ・さらには、在日朝鮮人をとりまく言論空間全体を俯瞰すべく、リベラル/保守言説における「北朝鮮」表象のあり方について、資料の収集・整理・批判的検討を行った。昨今のヘイトスピーチに代表される在日朝鮮人差別に対して、「リベラル」は自由を尊重する観点から異議を申し立てるが、たとえば朝鮮学校におけるナショナリズムが論評の対象になったとき、在日朝鮮人の主体的な意思や自律的な選択は後景に退けられ、構造的な「被害者」としての側面のみが強調される傾向がある。結果として、その双方にとって「北朝鮮」は、「正」に反した退けられるべきものとして位置づけられていることがわかった。こうした言説空間が、在日朝鮮人のナショナル・アイデンティティのあり方にも大きな影響を与えているものと考えられる。
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Research Products
(4 results)