2015 Fiscal Year Research-status Report
アウトブレイクにおける知識の信頼性の経時分析とコミュニティ・レジリエンス評価
Project/Area Number |
15K17210
|
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
中川 千草 龍谷大学, 農学部, 講師 (00632275)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | アウトブレイク / エボラ出血熱 / 感染症 / 知識 / 医療援助 / アフリカ / 社会学 / エコヘルス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、本研究のベースとなるデータ収集を主たる目的とし、以下の研究活動をおこない、国際社会や各国政府が科学的な根拠にもとづき、エボラ出血熱に関する知識を流通させようとするプロセスと、その際の課題についての情報を収集した。また、こうした科学的知識へのレスポンスと、その背景となる知識のしくみをローカルな文脈から分析するためのデータが得られた。 1)既存の関連資料の精読:科学的な知識の流通プロセスを把握するために、ギニア保健省やWHOが発行する資料について収集し、その内容を検討した。 2)ギニア「外」のステークホルダーへのインタビュー:2015年8月から9月にかけて、隣国のセネガル・ダカール在住のギニア人たちを対象とした、聞き取り調査を実施した。 3)ギニア「内」の現状に関する情報収集:現地アシスタントとの連携により、現地における啓蒙活動の様子や、病についての理解(症状・その原因・対処方法)とエボラ出血熱に関する理解や情報の蓄積に関するインタビューシートを用いた個別インタビュー(8人)を実施した。 これらの研究成果を次の通り発表した。口頭発表:日本アフリカ学会第52回学術大会(2015年5月)において「納得と拒否という住民の反応にみる、感染症対策における課題-ギニアにおけるエボラ出血熱に関する知の構造-」、論文・エッセイなど:「アフリックアフリカ・アフリカ便り」(2015年5月、web版)にて「エボラがつなげるわたしと彼らの日常」を、『アフリカレポート』No.53:pp73-104(2015年11月)にて「ギニアにおけるエボラ出血熱の流行をめぐる「知」の流通と滞留」を、「SYNODOS, シリーズ「等身大のアフリカ/最前線のアフリカ」」(2015年11月、web版)にて「日常に埋め込まれたエボラ出血熱-流行地ギニアに生きる人びとのリアリティ」を発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究実施計画にあげていた、3つの軸1)既存の関連資料の精読、2)ギニア「国外」のステークホルダーへのインタビュー、3)ギニア「国内」のステークホルダーへのインタビューは概ね、計画通り実施することができた。しかし、日本国内で開催される関連研究会などへの参加ができず(研究会そのものがほとんどなかったと思われる)、国内の類似テーマについて研究する者との交流があまり進まなかった。ただし、(本研究とは異なる研究資金を利用し)終息宣言後に現地入りし、直接的なインタビューや情報収集を実施できたこと、研究成果の発表機会を多く得ることができた点から、上記のように判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、科学的な知識の導入プロセスと国際社会における知識生産の分析を継続しながら、特定のコミュニティに対するインタビューに取り掛かり、現地の文脈からコミュニティ・レジリエンスのキー概念の析出を行うこととする。同一地域内では、自治組織(Commune)、親族関係、職業など、複数の異なるコミュニティごとに以下 a~c についてのインタビュー調査を実施する。さらに、各コミュニティ間の知識の生産と相互的な流通プロセスをあきらかにする。 a.病と死をめぐるローカルな知識(病のとらえ方・病人のケア・葬儀方法・禁忌観など) b.水や大気といった環境と人との関係性(宗教的な実践・衛生観など) c.情報伝達と意思決定のしくみ(リーダーの有無とその影響・ディアスポラを含むコミュニティ内外のネットワーク形成 計画からの変更点としては、調査候補地についての保留があげられる。2015年12月末に終息宣言が出たものの、2016年3月には再発が確認された。過去に比べ、非常に小規模のもの(地域も限定されている)であるため、ギニアへの渡航自体は可能と判断するが、Lola 県 Bossou 地区については、再発地に近いため、終息するまで訪問を見送ることとし、科学的知識のゲート・多様な知識の生産と流通のハブとして位置づけられる首都 Conakry 市および、コミュニティのレジリエンスが比較的高い地域としての Boke県 Kamsar 地区における現地調査を継続する。
|
Causes of Carryover |
現地調査(セネガル)での通訳およびガイドの依頼時間が、予定より少なくなったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の物品購入費に加え、2,107円を使用することとする。
|