2017 Fiscal Year Research-status Report
アウトブレイクにおける知識の信頼性の経時分析とコミュニティ・レジリエンス評価
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15K17210
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
中川 千草 龍谷大学, 農学部, 講師 (00632275)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アウトブレイク / 知の流通 / 感染症 / アフリカ / ギニア / エボラ熱 / ディアスポラ |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度については、2017年5月末より2018年1月末までが産前産後休業および育児休業期間だったため、当初の計画通りに研究を進めることが困難だった。よって、申請時に作成した研究計画よりは遅れが生じている状況にある。ただし、休業期間中も現地アシスタントとの連絡を取り続けることにより、メールにて随時報告を受け、現場の状況把握は可能な状態にあった。また、日本(特に関西)在住のギニア出身者を中心に、非公式ではあるが、研究テーマに関連する聞き取りをおこない、情報を収集した。 復職後の2018年2月から3月にかけてフランス・パリにおいて、約2週間のフィールドワークを実施した。このフィールドワークでは、パリ在住の(性別・職業・在住歴が異なる)ギニア人5名に「エボラ熱の流行をめぐるそれぞれの体験」についてのインタビュー調査をおこなった。これによって、エボラ熱をめぐる知の流通プロセスの一端と、流行の有無にかかわらず、アフリカ出身者に対する偏見やそれに対するかれらの理解・対応の様子があきらかとなった。また、エボラ熱流行当時から現在に到るまで、在外ギニア人が「故郷」における深刻な社会問題をどのように認識し、また対応するのかについての情報が得られた。これにより、これまで注目してきた科学的に正しいとされる知識とローカルな知識の対立と融合に加え、知識の一次的な変更という新たな分析軸への視野が開けた。 このように2017年度に実施したパリおよび日本での聞き取り(インタビュー)は予備調査的な位置づけのものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究実施計画において3年目となる2017年度は、産休および育休取得という、申請当時には予期していなかった事態が発生した。これに伴い、研究活動を中断せざるをえず、研究は実施計画よりは遅れていると言わざるを得ない状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
約1年間、研究活動を休止していたため、研究期間の延長を視野に入れつつ、研究実施計画を柔軟に変更させていくことを考えている。また、ギニアにおけるフィールドワークと並行し、パリと日本在住のギニア人(ディアスポラ)を対象とした聞き取り調査を実施し、エボラ熱とその流行をめぐる知の流通構造を、ギニア内外双方、様々な立場から分析し、知の入手・選択・発信のプロセスをより立体的にとらえることを目指す。その結果は、国内の学術大会(アフリカ学会など)において発表する。また、病をめぐるローカルな認識構造についての文献や、すでに発行されているエボラ熱関連文献の翻訳や解釈を進める。
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Causes of Carryover |
産休および育休取得により、研究活動を休止していたために、次年度使用額が生じた。使用計画としては、遅れている研究活動を補完するために、フィールドワークの際の現地アシスタント数を増やし、現地でも作業を効率よく進めるための機器の購入、さらにパリでのフィールドワークにおける通訳雇用を予定している。また、関連文献の翻訳を依頼する。
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