2016 Fiscal Year Research-status Report
長期避難生活を送る高齢者の心理社会的影響の評価と支援方法の開発
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15K17296
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
黒田 佑次郎 福島県立医科大学, 医学部, 学内講師 (50538783)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 災害時の公衆衛生 / 心理的ストレス / 要介護リスク / 高齢者保健 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、東日本大震災により長期避難生活を余儀なくされている住民の心理社会的影響を評価し、得られた知見をもとに心理的支援のあり方を検討するものである。平成28年度は、要介護認定率が全村避難によってその傾向が促進されるかを明らかにするとともに、どのような要因が要介護状態のリスクになったかを、4年間の追跡調査で検討した。さらに、震災後に行われてきた運動教室に定期的に参加することにより、要介護状態のリスク(心理的要因)が低減されるかの介入効果を検討し、震災に伴う中長期的な介護予防事業のあり方を検討することを目的とした。対象者は、2010年3月に、飯舘村に在住する高齢者のうち、調査票を回収した1,358名(回収率84.3%)とし、欠損を除外した1,159名を分析対象とした。目的変数は新規の「要介護認定発生(認定群・自立群)」とした。説明変数として、年齢、性別、そして基本チェックリスト(KCL)を用いて「運動器の機能向上」「栄養改善」「口腔機能の向上」「閉じこもり予防・支援」「認知症予防・支援」「うつ予防・支援」の6つの下位項目を評価した。分析はCox比例ハザード回帰分析を用いて、要介護認定についてのハザード比(HR)を求めた。さらに、震災後の運動教室への参加(参加群・非参加群)ごとに解析を行った。その結果、震災前に「運動器の機能向上」「認知症予防・支援」「うつ予防・支援」に該当していたものが、該当しないものに比べて、より震災後に要介護認定を受けていることが明らかになった。また、運動教室に参加することは部分的に要介護リスク(心理的要因)を軽減することが示された。したがって、震災などの有事に生活機能が低下している高齢者を早期に発見し、運動教室などの介入に結びつけることは、要介護リスクを減らす対策として有効であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自治体と連携し、既存データを用いたコホート研究デザインで、震災前後の要介護認定発生の同行とリスク要因を明かにした。得られた知見は、自治体にフィードバックをするとともに、論文投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
調査結果を自治体にフィードバックするとともに、有効なプログラムを立案する。長期的な対策につながるように、保健師などの保健医療従事者に技術提供をしていく。
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Causes of Carryover |
当該年度に予定していた海外での調査および打ち合わせが延期となったため、来年度に計上をする。また予定していた英語論文も来年度に出版するため、投稿費用を来年度に繰り越す予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外での調査および打ち合わせを行うとともに、得られた成果を英文誌に投稿をする。また、予定より多くの量的・質的データが分析可能となったために、分析ソフトおよび分析用のコンピューターを購入する予定である。また、インタビュー調査を中心とした、得られた結果を広く住民に伝えるために、編集・デザイン作業を専門業者に外部委託する予定である。
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Research Products
(18 results)