2016 Fiscal Year Annual Research Report
The interaction of cognition and bodily movements
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15K17329
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
板口 典弘 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 訪問研究員 (50706637)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 身体性 / 運動 / 認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
書字運動と認知処理に深く関わる日常的現象として,空書という現象が知られている。空書とは,私たちが何か漢字や英語のつづりを思いだそうとする際に指を使用して“書字”してしまう現象である。この現象は私たちに非常に馴染み深いものであるにもかかわらず,指の運動がなぜ私たちの認知に影響するのかは明らかでなかった。 本研究では,以下の3点を検討した。すなわち,(1)空書が認知課題処理に与える促進的影響について,どのような成分が寄与しているのか,(2)個人の語彙レベルと空書の促進的影響がどのように関係しているか,(3)頭頂葉損傷患者において,空書行動が見られるかどうか,であった。実験では,漢字構成課題,画数カウント課題,および百羅漢という漢字テストを用いた。 どの要素が空書の促進的影響に寄与しているのかを検討するために,空書を許可する条件,禁止する条件,および円運動を行う条件の3条件を設け,条件課題の成績差を算出した。特に3つ目の条件は従来検討されてこなかった運動学的要素を検討するために重要な条件であった。さらに,空書の視覚的要素に関する条件として,画面を注視する条件と,手指を注視する条件を設けた。 実験の結果,手指を注視する条件においてのみ,空書遂行による漢字構成課題の促進効果が得られた。一方で,文字画数カウント課題においては,視覚条件に関係なく促進効果が得られた。この結果は,空書が文字を思い出すという認知活動に影響を与える原因は,運動そのものではなく,視覚的な成分の再構築にあることを示唆した。また,個人語彙レベルは,空書の促進的影響と相関しなかった。これは,空書は語彙ネットワークの活性化を助けているわけではなく,視覚的な確認処理を補助しているということを示唆した。さらに,漢字の読み能力が保たれ,かつ構成障害がない頭頂葉損傷患者においては,健常者と同様の空書効果が得られた。
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Research Products
(1 results)