2017 Fiscal Year Research-status Report
社会教育実践であるファミリー・サポート・センター事業のコーディネーターの力量形成
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15K17363
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
東内 瑠里子 日本福祉大学, 子ども発達学部, 准教授 (50390315)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 安全・安心な子育て支援に向けた養成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、子育て問題が複雑化している沖縄県の18の事業(石垣市を除く)を対象にヒアリングを実施する予定であったが、妊娠・出産により体調不良が続いたため、遠方の出張をすることができなくなってしまった。そのため、計画を変更せざるを得なくなった。 そこで、女性労働協会が実施している、全国のファミリー・サポート・センターの研修会に参加し、全国の動向調査をおこなった。あわせて女性労働協会が実施している調査を分析することによって、「ファミリー・サポート・センター事業の現状と支援者養成の課題ーアドバイザーの専門性を支える国・自治体の条件整備の必要性ー」という論文にまとめることができた。 本論文では、アドバイザーや援助を行う会員の並々ならぬ情熱や善意だけで運営されてきた事業が、活動全体を客観的にマネジメントすることによって、安全な活動が目指されるようになってきている現状を明らかにした。また、支援者養成が徹底されない現状(緊急救命講習の未実施など)と課題について分析した。そこには、講習を丁寧に実施しているセンターと、していないセンターが二極化している現状があること、講習をしていないセンターには、講習の必要性は理解しながらも、援助を行う会員不足のジレンマがあることが明らかとなった。 だが、援助活動を行う会員不足が深刻な地域でも、養成講座をていねいに行うことをあきらめないセンターがあった。そこでは熱心な会員募集を継続しながら、ファミサポ事業だけで課題を抱えるのではなく、他の援助活動につなげたり、ボランティアだけに頼らない公的支援メニューの充実を自治体に訴えかけたり、活動のための寄付を集めたりするなど、多様な工夫を生み出していた。 対局的に、自治体の理解とアドバイザーの専門性の有無が、養成講座の実施にも影響をあたえていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
妊娠に伴う体調不良および産前産後休暇にともなう研究中断があり、当初予定していた出張を伴うフィールド調査がほとんどできない状況になってしまったため、研究が遅れてしまった。今年度取り戻したい。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年までのフィールド調査の積み残しを実施した後、質問紙調査を行いたい。これまでのアドバイザーの専門性の研究から、各地域の支援構造の違いや住民意識の違い、委託の有無、委託先の違いなどによる専門性の違いが存在するが、普遍的な事項として、次の5つの領域に整理することができた。それは、①家族の抱えている子育て問題解決の方向性の見極めとより良い調整機能、②提供会員である住民の力量形成および力量の見極め、③子育て支援組織の構造的把握とネットワーク化、④リスクマネジメント力、⑤子どもの権利を常に尊重することである。 これらの専門性をアドバイザーがどのようにして身につけているのか、フィールド調査だけでなく、質問紙調査によっても明らかにしたい。アドバイザーが専門性を身につける方法としては、フォーマルな形態(学校教育ほど組織化されていないが)とノンフォーマルな形態、インフォーマルな形態があると考えられる。これまでの女性労働協会の調査では、フォーマルな形態に関する質問事項「アドバイザーのための研修会の参加有無と主催者および研修内容について」があった。研修内容のニーズで最も回答が多かったのは、他センターの情報交流を通じたセンター同士の関わりに関してであった。その他、会員との上手な関わり方(傾聴、コミュニケーションスキルアップ講座等)に対するニーズが高いが、研修を受講した割合は低いことが明らかとなっている。つまり、ノンフォーマルな形態の研修ニーズが高く、その基盤として、インフォーマルな形態で、専門性を身につけているケースが多いことが考えられる。これらの実態やプロセスが明らかとなる調査紙を作成し、研究を実施しようと考えている。
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Causes of Carryover |
妊娠出産にともなう体調不良によって、遠方の出張ができなくなってしまったこと、および産休による科研費研究の中断によって、次年度使用額が発生した。 次年度使用額によって、積み残したフィールド先の調査を実施したい。また、アドバイザーの専門性がどのように身につけられているのかを明らかにするために、当初予定はしていなかったが、全国のファミリー・サポート・センターに向けた質問紙調査によっても明らかにしたい。調査紙調査の分析のため、SPSSソフトを購入する。また、研究の遅れを取り戻すため、次年度使用額を、データ処理の一部を外部に委託するための、人件費・謝金、その他(委託費)などに使用したい。
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