2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K17366
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Research Institution | Heian Jogakuin(St.Agnes')University |
Principal Investigator |
陳 虹ブン 平安女学院大学, 国際観光学部, 准教授 (60534849)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 台湾 / 植民地教育 / 教科書 / 教育史 / 国語教育 / 国語教科書 / 台湾教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は教材研究を民俗学という新しい視点から分析する目的を持っているため、研究協力者である松山(人類学・民俗学)に相談し、同氏が引率するオーストラリアのフィールドワークに同行させていただいた。オーストラリアは植民地だった文化や歴史をどのように日本と違う手法でその歴史を再現するのかを考察してきた。その中でも特に女性学、民俗学、医学などの目線からの研究が中心であり、扱う素材も日記、手記、映画、写真など多様に渡り、これまで教科書のみ用いてきた研究者には大きな刺激となった。 研究実績としては「日本統治下台湾人用国語教科書からみる都市と農村」を執筆した。計画書の段階では各種類の教科書教材を三年間にわけて分析すると予定していたが、教材研究の結果はすでに前段階の若手研究の時に終えていたので、より明確かつ重要なテーマを設定し、全種類の教材を検討することにした。今年執筆した原稿では1920、30年代の台湾に現れた都市と農村の教育問題をテーマに、台湾人用国語教科書を対象として教材の編さんや教材の取扱いにおいて都市・農村問題による影響を検証したものである。当時公学校で使用する教科書は社会教育に属する国語講習所用の物とは違い、教材の選択において、1937年から刊行された第四期以降の教科書では都市と農村の差を最低限に抑えられるようになった。それに対し、国語講習所用の1939年版新国語教本は初級段階では兼用できるように配慮するが、最終的に都市用と農村用にと別々の教科書を刊行することとなっていたことも明らかとなった。 また、計画書には日本植民地教育史研究会の出版プロジェクトに参加し、本研究の研究成果を中学生以上を対象とするブックレットとして出版すると記しているが、出版計画が予定より早まり、現在原稿を執筆しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は計画書の段階から写真、回想録などを活用できるように計画を立てていたが、予定していた資料調査先の一つである玉川大学教育博物館は引っ越し作業で資料の収集がしばらくできなくなった。これにより、一回分の東京出張の旅費(約45000円)が残り、2016年度経費へ繰り越すとなっった。なお、ブックレットの出版予定が早まったので、分析のスケジュールと方法を調整して対応できたが、写真などの資料収集や掲載同意書を取得するなどの作業が予定より増えたため、一部はまだ済んでおらず、2016年度引き続き行うこととなった。 それ以外の作業はおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は研究結果の発表と出版を考え、計画通りに教材の分析を進める以外に、「植民地台湾における児童の「実生活」の再現」に力を入れて行いたいと考えている。教科書に書かれている当時の児童生活の再現は本研究の最大の課題であり、最も肝心な部分でもあるので、引き続き民俗関連雑誌・資料(『台湾慣習記事』、『民俗台湾』など)、教育雑誌(『台湾教育』など)、教授資料、聞き取り調査記録や回想録、写真集などの資料も集めたる予定です。特に現在台湾現地では公共の図書館以外に、民間の収集家もたくさんの映像や資料を集めている。今後も必要に応じ、実際に現地を訪れ、資料調査などを行う予定である。 また、植民地期台湾用国語教科書の「教育効果」に着目し、重要な教育課題に沿ってテーマを定め、教科書分析の結果を原稿にまとめていきたい。
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Causes of Carryover |
予定していた資料調査先の一つである玉川大学教育博物館は引っ越し作業で資料の収集がしばらくできなくなった。これにより、一回分の東京出張の旅費(約45000円)が残り、2016年度経費への繰越金とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度に東京への資料収集と写真資料の調査に使う予定である。
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Research Products
(1 results)