2018 Fiscal Year Annual Research Report
The Ideal and Reality Based on the Japanese Language Textbooks of Colonial Taiwan
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15K17366
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Research Institution | Heian Jogakuin(St.Agnes')University |
Principal Investigator |
陳 虹ブン 平安女学院大学, 国際観光学部, 准教授 (60534849)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 植民地教育 / 台湾 / 教科書 / 国語教科書 / 教育史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究(国語教科書から見る植民地台湾の理想像とその現実)の目的は、日本統治下の台湾で使われていた初等・初級国語(日本語)教科書に描かれている理想な植民地「国民像」「生活像」を、当時台湾社会の実際状況や生徒たちの実生活と照り合わせ、総督府は植民地台湾の何を変えたかったのか、最終的に何を変えられたのか、何を変えられなかったのかを明らかにすることである。なお、植民地教育の研究成果を最終的に正確かつ分かりやすく学習者や一般人に伝えるために、実生活に密接した視点を取り入れて分析を行った。 上述の目的を達成するために、研究期間中、日本統治下台湾人児童の日常生活と国語教科をテーマに計3本の論文を発表した。子供の生活にかかわる衣食住をはじめ、学校生活、社会生活、それから植民地台湾の産業発展と教科書の関連性等に着目している。これらの研究を通してわかったのは、日本統治時代の教科書に採用される多くの教材では、統治側が望む「理想像」が述べられ、子どもが営んでいる現実の生活とは完全に合致しているものではなかったことである。台湾人児童を対象に施された近代的な公学校教育は台湾人児童にとっては新鮮で楽しいものだったが、経済や産業の要素を優先とした教育内容や実業科目の設定等からみれば、植民地統治が持つ経済目的を忠実に反映したものであったことも明らかとなった。 上述の論文以外に、文化と歴史のつながりという視点から、勤務大学で使用するテキストに本研究の研究成果の一部を活用して現代の日台関係の理解するための論文を1本まとめた。さらに、大学だけではなく、初等中等教育の学校でも使える副教材の作成を目指し、2019年2月にブックレット『日本統治下の教科書と台湾の子どもたち』(風響社、2019)を出版した。
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