2015 Fiscal Year Research-status Report
算数・数学科授業にみる相互行為の構造に関する研究:発問-応答過程を視点に
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15K17398
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
舟橋 友香 奈良教育大学, 教育学部, 准教授 (30707469)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 算数・数学科授業 / 相互行為 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本の経験豊富な教師による算数・数学科授業における相互行為のパターンを発問-応答過程を視点として特定し、その展開にみる教授行為・学習行為の特質を明らかにすることである。 平成27年度は、次のことに取り組んだ。第一に、先行研究による授業を記述する枠組みをもとに、数学科授業にみる相互行為を分析するための新たな枠組みを提案した。具体的には、授業者と学習者の知覚を捉えるために、「対象」、「考察の観点」、及び「考察の結果」という3つの視点から授業事象を解釈することを提案した。第二に、考案した枠組みを用いて、すでに電子化されて分析可能な状態にある中学校数学科授業の分析を行った。中学校第2学年「連立方程式」の授業における授業者と学習者の知覚の相違に焦点を当て、数学科授業にみる相互行為の構成に関する特徴を分析した。その結果、教師が「対象」として焦点化したい内容と、生徒にとって考察の対象に据えることの必要性を認識した内容とのずれが特定され、新たな対象を設定すること、及びその対象を考察するための観点を設定することへと授業が進展していかなかった様相が浮かび上がった。また、分析した授業においては、それぞれの場面で対象を設定していたのは教師であった。その際、新たな考察の観点が必要となる対象を設定したり、方法の多様性を把握した場合に方法自体を次なる対象に設定して序列化を促したりしていた。教師がいかに対象を認識し、考察の観点を設定しているのかに加えて、どのような契機でそれらの行為が生徒自身で行えるようになっていくのかを精緻に捉えていくことが、今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、今後の分析を進める上で重要となる相互行為を分析するための新たな枠組みを提案し、さらにすでに分析可能なデータを用いて実証的にその有効性を検討することができた。この面については、研究は順調に進展しているといえる。一方で、新規授業データの収集については、奈良市内の公立小学校に依頼して試みたものの、機材や日程の都合で十分なデータ収集が行うことが困難であった。しかし、当該小学校とは今後の研究への協力体制を確認しているため、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者が平成28年6月から平成29年3月まで産休・育休に入る予定である。したがって、平成28年度以降の計画を1年ずつ先に延ばして推進する予定である。
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Causes of Carryover |
計画では、オーストラリア・ホバートで開催された国際学会PME39に参加する予定であったため、旅費として計上した。しかし、大学で担当している講義との関連で参加することができなかったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度(平成28年度)は、産休・育休期間となるため、平成29年度に使用する。具体的には、新たに加える学会発表及び情報収集の旅費として用いる。
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