2017 Fiscal Year Research-status Report
ドイツの政治教育における雇用・労働問題の教育内容構成の研究
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15K17407
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
寺田 佳孝 国際医療福祉大学, 小田原保健医療学部, 講師 (50705960)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ドイツ / 政治教育 / 労働・雇用問題の教育 / 経済問題の教育 / 教科書分析 / カリキュラム分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究成果は、大きく以下2点にまとめられる。 第1に、ドイツの労働・雇用問題の教育内容、カリキュラムに関して、主にノルトライン・ヴェストファーレン州の政治/経済科および社会科学科の学習指導要領(コア・カリキュラムと呼ばれる)を分析し、習得を目指す能力・資質を明らかにするとともに、同指導要領に基づいて作成されている教科書を取り上げ、その具体的なカリキュラムならびに発問・課題の構造を分析した。その結果として、同州の政治教育が、既存の政治・社会に対する批判的・主体的な判断力と行動力の育成を教育目的に掲げ、それに見合った形で労働・雇用に関する法制度、社会情勢の知識の習得と批判的分析力、行動力の育成を目指していることを明らかにした。以上の内容については、2017年5月に公開された日本カリキュラム学会の学会誌『カリキュラム研究』において発表した。 第2に、ドイツの経済・貧困問題に関する教育内容、カリキュラムを分析した。本分析に関しては、上記同様、ノルトライン・ヴェストファーレン州の政治/経済科の学習指導要領(コア・カリキュラム)およびそれに基づく教科書を分析した。この作業の特徴として、複数の中等教育段階の学校種の政治教育のカリキュラムを比較分析したこと、また、現代ドイツにおける貧困問題について、ドイツ政府の各種報告書および日本の社会学者、労働研究者の研究業績を参考に現状を整理し、その内容を分析の視点として教科書分析を行った点がある。結果として、ドイツの政治教育においては、現在ドイツの貧困問題がいずれの学校種においても取り上げられ、しかも学習者が現状を批判的に分析し、自らの行動に移すことができるよう促すカリキュラム構造となっていた。本研究の成果については、2017年11月に公開された中央教育研究所の紀要『教科書フォーラム』にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、ドイツの政治教育における労働・雇用問題について、そのカリキュラムを明らかにすることであった。その際、分析の視点として、ドイツの労働論、労働研究者・社会学者等の労働・雇用に関する研究成果を参照し、それと照らし合わせる形で教育内容を分析するという手法を用いている。 現在の時点で、①ドイツの労働・雇用政策、労働法制、労働環境・貧困の実態の整理、②ドイツの政治教育における①に関する教育内容構成の2点については、一定程度の分析を行い、すでに『カリキュラム研究』『教科書フォーラム』といった研究雑誌上で論文としてその成果を発表してきた。 他方で、③ドイツにおける労働論に関する思想的・哲学的分析とそれにかかる労働システムの構築をめぐる議論については、まだ十分に整理ができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
上記「現在までの進捗状況」で書いた通り、本研究の3つの計画のうち、①ドイツの雇用・労働政策の展開と労働法制、及び貧困等労働環境の現状、②ドイツの政治教育におけるカリキュラムの内容構成については、計画通り分析を進め、その成果を学会誌等で公表してきた。他方、③ドイツにおける労働論、労働システムのあり方をめぐる議論については、まだ十分に整理できていない。まず、この点を主にドイツの社会学者、思想家の議論を手がかりに整理し、それと政治教育のカリキュラムとの関係性について分析を進めていく。また、可能であれば、政治教育の現実的側面として、学校における政治教育の授業分析、および政治教育を経験してきたドイツの青年に対する聞き取りを実施し、同国の教育の実態の把握に努める。
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Causes of Carryover |
今年度の調査において、前年度に実施した調査の際に収集した資料を活用することで、当初の計画以上に関連経費(とくに旅行費)を抑えることができた。そこで、1年研究機関を延長し、未だ十分に調査できていないドイツの労働論・労働システムの哲学的考察に関する著書を収集し、それとの関係でドイツの政治教育のカリキュラム分析を実施する。さらに、可能であればドイツの学校における政治教育の実態を分析すると共に、同国の政治教育を実際に経験した青年に聞き取り調査を実施し、教育実態の把握に努める。
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Research Products
(3 results)