2015 Fiscal Year Research-status Report
ナノ磁性材料の3次元磁気特性解析のためのX線強磁性共鳴顕微鏡の開発
Project/Area Number |
15K17458
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
上野 哲朗 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 元素戦略磁性材料研究拠点, NIMSポスドク研究員 (20609747)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 強磁性共鳴 / X線磁気円二色性 / ナノ磁性材料 / スピントロニクス / 磁性薄膜 / 磁化ダイナミクス / 顕微鏡 / 放射光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的であるX線強磁性共鳴顕微鏡の実現のため、本年度はその第一段階として強磁性共鳴装置の開発を行った。強磁性共鳴は静磁場中に置かれた強磁性体に高周波磁場を印加した際の磁化の歳差運動を検出し、磁化のダイナミクスを調べる実験手法である。強磁性共鳴装置には導波管中に試料をおく方法とウェーブガイド上に試料を置く方法の2種類があるが、今後の放射光を用いたX線強磁性共鳴への適用を考慮し、本研究ではウェーブガイドを用いる方法を採用した。要素技術として以下の検討、研究開発を行った。 (1) コプレーナ型ウェーブガイドを設計・製作し、ベクトルネットワークアナライザーを用いて0~40 GHzまでの周波数特性を計測した。 (2) テスト計測用の試料としてMgO基板上に50 nmのFe薄膜、Ni薄膜、FePt薄膜を作成し、これらの磁気特性を確認した。 (3) 静磁場発生装置として小型の常伝導電磁石を用い、外部制御可能な直流電源と計測・制御システム用プラットホームであるLabVIEW (米国National Instruments社)を組み合わせた磁場自動掃引システムを構築した。 (4) 放射光実験へ向けて高エネルギー加速器研究機構・物質構造科学研究所・放射光科学研究施設(フォトンファクトリー: PF)において、スペクトラムアナライザーを用いて放射光の発生周期に同期した信号を取り出し、約500 MHzであることを確認した。さらにシグナルジェネレータにコムジェネレータを接続し500 MHz信号の高調波信号(1 GHz, 1.5 GHz等)を発生させることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究実施計画では平成27年度中に強磁性共鳴装置の開発を完了し、放射光を用いたX線強磁性共鳴装置のテスト測定までを行う予定であった。しかしながらコプレーナ型ウェーブガイドの製作・動作確認に予想以上に時間がかかり、当初の予定まで進捗しなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究実施計画よりも進捗状況にやや遅れが出ているものの、強磁性共鳴装置及びX線強磁性共鳴装置の開発に必要な要素技術の検討、開発はほぼ完了している。今年度はこれらの要素技術を有機的に組み合わせた計測システムを構築する。本研究の目的であるX線強磁性共鳴顕微鏡の実現のためには、走査型X線顕微鏡との融合が必要である。その際には試料空間の制約などから、静磁場印加環境の構築などにはさらなる検討が必要だと予想されるが、これらも並行して行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初計画ではX線強磁性共鳴装置を開発するための真空機器などを購入する予定であったが、進捗にやや遅れが出たため、本年度では一部の計測機器を購入するにとどまった。また予定していた論文発表、学会発表への支出がなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究実施計画に基づき、研究開発状況からフィードバックをかけつつ、目的実現のための最適な計測システムを構築すべく予算執行する計画である。論文発表や学会発表の際の英文校閲料、旅費を支出する予定である。
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