2016 Fiscal Year Research-status Report
多波長天文観測に基づく低重元素量環境下での星間分子化学の研究
Project/Area Number |
15K17612
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
下西 隆 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (80725599)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 電波天文学 / 光赤外線天文学 / 星間化学 / アストロケミストリー / 星間分子 / 氷 / マゼラン雲 / 系外銀河 |
Outline of Annual Research Achievements |
星や惑星、そして生命の材料となる物質は宇宙空間のどのような環境で生成され、どのような化学的進化を遂げ、そしてどのような多様性を持つのだろうか。これらの謎に対し、本研究は従来の天文学に化学的視点を取り入れ、宇宙空間に存在する物質の天文観測を軸として、関連する理論計算・実験的研究の手法なども駆使して迫っていく。 平成28年は特に電波観測による天文観測データの収集・解析に注力し、系外銀河に存在する星間分子の化学的性質に関する研究成果を得た。成果は当該年度中に論文として発表されており、本論文は系外銀河に初めてホットコアと呼ばれる化学的に豊かな天体を発見した先駆的研究として注目を集めている。また、得られた成果に基づき、国内外の学会・研究会等における成果発表も積極的に行った。研究成果の積極的な国際発信は、本研究の国際的な評価を高めることに着実に貢献している。さらに、所属研究機関を通して発表論文の内容についての国内・国際プレスリリースを行い、研究成果の社会への還元にも尽力した。また、これまでにヨーロッパ南天天文台の望遠鏡VLTを用いて取得した観測データの詳細な解析を行い、銀河系外原始星の周囲に存在する氷についての研究成果を得た。さらに、極低温での星間物質模擬試料の赤外線スペクトル測定実験や数値シミュレーションによる星間化学モデル計算など、観測天文学以外の分野にも取り組んだ。観測・理論・実験の幅広い視点に基づき研究を推進することにより、星間空間での物質生成・進化について多角的に調査を行うことができている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の計画として予定していた天文観測計画の遂行、得られたデータに基づく論文発表、国内及び国際会議における積極的な成果発表などは、全て順調に進展し、当初の計画目標は達成された。特に、ALMAなどの国際的に競争の激しい望遠鏡における観測時間獲得や、これに基づく成果論文の発表などは重要な成果である。また、これまでにすばる望遠鏡やVLTなどの大型光学望遠鏡で取得した観測データについても解析を行い、現在論文を執筆中である。さらに、天文観測だけでなく、数値シミュレーションや実験室宇宙物理学の手法を用いた新たな研究分野でも、アストロケミストリーの視点からの研究を進めている。特に数値シミュレーションによる理論的研究については、今年度詳細な解析を行い、この結果に基づき論文の執筆を行っている。以上を踏まえ、当初の計画以上に研究が進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の研究においては、上述の観測的研究を継続しつつ、得られたデータに対して理論的解釈を与えるための研究も継続していく。特に、化学反応ネットワーク計算を応用した分子雲化学の数値シミュレーションの結果を論文としてまとめ、銀河の重元素量環境と分子進化の関係性を理論的に明らかにする基盤としてく。さらに、実験的研究を発展させ、天文観測と実験室宇宙物理学を融合させた研究分野を切り開いていく。また、本年度の成果に基づき、今後の研究につながる新たな天文観測計画を様々な望遠鏡群に対して提案していく。
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Research Products
(13 results)