2016 Fiscal Year Research-status Report
惑星形成・進化によって失われた元素のゆくえ:高圧高温実験からのアプローチ
Project/Area Number |
15K17785
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浜根 大輔 東京大学, 物性研究所, 技術職員 (20579073)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ミッシングゼノン |
Outline of Annual Research Achievements |
地球や火星の大気や全岩組成はその元となった始源的隕石の組成とおおむね調和的であるが,一方で惑星形成から現在に至るまでに選択的に欠損し所在不明となった元素もいくつか存在する。本研究ではその行方不明の元素のうち,希ガス元素であるキセノン(Xenon)に注目し,未解決の課題となっている「Missing Xenon問題」の解明に寄与することを目的とする。本研究ではキセノンをはじめとした希ガスと地球や火星のマグマオーシャンとの反応性を調べ,キセノンが惑星深部で捕縛されている可能性などを検討し,希ガスの中でキセノンが選択的に消失する地質学的プロセスの解明を目指す。 本年度は地球深部における高圧高温環境で希ガスとシリカクラスレートとの反応性を中心に,それを実験的に調べた。またその評価基準となる希ガスフリーの条件での実験も行った。具体的にはシリカクラスレートと希ガスキセノンをダイアモンダンビルセル中に封じ,高圧高温での反応を5ギガパスカル,1500ケルビンまで検討した。 まず評価基準となる希ガスフリーの実験において,シリカクラスレートをメタノールエタノール媒体中で順次加圧し,体積弾性率などの基本的な物性値を取得した。また約30ギガパスカルまで加圧を行い結晶構造の変化などを観察した。シリカクラスレートをあらかじめ加熱し内包ガス分子を除いた結晶に関しても同様の実験を行い,その高圧挙動を調査した。キセノン雰囲気での加圧および加熱でシリカクラスレートの再結晶化が当初は期待されたが,結果的に脱ガスの挙動と判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地球マントルに存在しうる鉱物や,希ガスを内包するポテンシャルを持つシリカクラスレートに対してキセノンとの反応性を調査している。これまでのところ鉱物とキセノンが化学反応を示した形跡は認められない。ミッシングゼノン問題の解明にあたって当初からいくかのシナリオを想定しており,本年度までの結果はその範囲内である。研究は順調に進捗していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
地球マントルの圧力-温度範囲は広い。これまで希ガスとの化学反応が確認されなかった鉱物についても,これまでの実験条件をさらに拡大していくと共に,未検証のマントル鉱物と希ガスの反応性を探っていく。これまでは希ガスはキセノンを中心に使っていたが,今年度には対象の希ガスをアルゴンに拡大した実験を計画している。
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Causes of Carryover |
実験消耗品について想定よりも損傷が少なかったこともあり,物品費の支出が抑えられたため。また放射光施設のメンテナンスによる実験機会の減少もあって旅費の支出も抑えられたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験消耗品は非常に高価なため,主に消耗品の購入に充てる。
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Research Products
(11 results)