2015 Fiscal Year Research-status Report
ロボット統合型マイクロ流体チップによる卵子機械的特徴量の長期タイムラプス計測
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15K18003
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
佐久間 臣耶 名古屋大学, 未来社会創造機構, 助教 (40724464)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マイクロ・ナノデバイス / マイクロマシン / 細胞・組織 / 知能機械 / 超精密計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,長期培養中の卵子の機械的特徴量と発生率の関連性を調査することを目指し,経時的に機械的特徴量を計測することを目的とする.(1) 卵子を長期間培養しながら機械的特徴量を計測するためのピペット型ロボチップを作製することに成功した.ピペット型ロボチップに用いる材料には,高精度な機械的特徴量計測を達成するための被加工材としての高い加工分解能に加え,長期タイムラプス計測を達成するための長期安定性が求められる.そこで本研究では卵子計測のためのロボット構造体及びマイクロ流路をシリコンのDeep RIEにより作製し,それらをガラスを用いてパッケージングすることでチップの作製を行った.この作製工程において,ガラス基板上に接合したシリコン基板のDeep RIEによる貫通加工時にシリコン基板のオーバーエッチングが問題となるが,犠牲パターン配置によるマイクロローディング効果の低減と,エッチストップレイヤーの成膜とパルスプラズマを用いたDeep RIEによるチャージアップの低減を行うことで,この問題を解決した.(2) ピペット型ロボチップを用いた,卵子のチップ内への吸引に成功した.チップにはチップ内で駆動するロボットによる機械的特徴量計測機能に加え,ポリジメチルシロキサン製のメンブレン型ポンプを統合した.メンブレン型ポンプを指で押すことによりピペッティングを行うことができる.ピペッティングによる卵子の吸引実験を行い,10回の実験において10個/10個の吸引に成功した.(3) ピペット型ロボチップを用いた,卵子の機械的特徴量計測に成功した.卵子の機械的特徴量計測は,磁気駆動型プローブにより力センサに卵子を押し込み,その時の反力と変形量を計測することにより行った.平行平板による球殻の圧縮モデルを適用することで,卵子の透明帯のモデル化を行い,その機械的特徴量の算出した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) ピペット型ロボチップの設計・作製 単一卵子を長期培養しながら粘弾性特性,形状特性,色情報等の機械的特徴量をタイムラプス計測するために,ピペット型ロボチップを設計・製作を行った.手動膜型ポンプを用いることで,卵子を吸引口からピペッティングによりマイクロ流路内を計測部まで搬送に成功した.チップの計測部において,磁気駆動型プローブと力センサを用いることで,卵子を変形させた際の,卵子の反力計測を行った.チップ作製においては,チップ材料の長期安定性を確保するために,ガラスを用いてシリコン構造体のロボットをチップ内にパッケージングするガラス-シリコン系のピペット型ロボチップを作製した.シリコンのドライエッチング時の,マイクロローディング効果および基板のチャージアップによる不均一なエッチングを防ぐために,シリコン基板の接合面にあらかじめエッチングのストップ層として,金属薄膜を成膜することで,高精度かつ均一なマイクロ構造体を作製した. (2) 機械的特徴量および生物学的特徴量指標 ピペット型ロボチップを用いて,細胞の機械的特徴量計測を行った.さらに,平行平板による球殻の圧縮モデルを適用することで,卵子の透明帯のモデル化を行い,その機械的特徴量の算出した. (3) 特徴量計測システム統合とデータベース化 磁気駆動型プローブを用いた卵子の機械的特徴量計測のために,顕微鏡に画像センサをおよび磁気駆動ユニットを統合し,長期タイムラプス計測システムの設計および基礎評価を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
メンブレン型ポンプの特性評価を行い,卵子の搬送精度に対して吸引流量,膜型ポンプの膜厚設計など,定量的な評価を行う.これらのデータと前年度までの成果および知見をもとに,ピペット型ロボチップの再設計・作製を行う. ピペット型ロボチップの評価では,磁気駆動型プローブの繰り返し位置決め精度,力センサのキャリブレーションを行う.また長期培養中の卵子の機械的特徴量と発生率の関連性を調査することを目的とし,チップ材料の長期安定性を評価することで,経時的に機械的特徴量を計測するための長期タイムラプス計測システムの構築および評価を行う.受精卵が胚盤胞になるまでの約7日間の長期個別培養・個別計測を行う. 計測は,顕微鏡に取り付けた画像センサを用いることで,卵子の形状特性だけでなく卵子の変形時の時間的な反力の変化から,粘性および弾性特性を計測する.計測速度は対象物の変形速度を考慮してチップ設置後10 秒/回を目標とする.さらに,モデルを単純なバネダンパ系と仮定した場合,計測精度は等価ヤング率で10 Pa,等価粘性係数で10 Pa・s とし,FEM による解析によりモデル化精度の妥当性を評価する.計測した機械的特徴量と,生物学的特徴量のデータを比較することで,培養時におけるどの時期のどのパラメータが重要なのかという高活性卵子の指標化を試みる.以上のように,粘弾性特性,形状特性,色情報等の機械的特徴量と,発生率・受胎率の総合的なデータベースを構築することを目標とする.
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Research Products
(2 results)