2016 Fiscal Year Research-status Report
伝統木造建物の土壁の健全度診断法の構築とそれを反映した崩壊挙動解析法の開発
Project/Area Number |
15K18153
|
Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
村本 真 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 講師 (70510296)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 土壁 / 伝統木造 / 壁土 / 押し込み試験 / 健全度評価 / 数値解析法 / 土壁の復元力特性モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,伝統木造建物の土壁の評価を取り入れたシミュレーション技術を構築し,伝統木造建物の保存・再生に活用することを目的とする.平成28年度に実施した研究を以下の(1)~(4)に示す. (1)壁土の圧縮試験に関するデータベースを構築し整理した.平成27年度の整理結果に加えて,土壁実験の構造性能と壁土の特性の関係についても既往の文献から抽出して整理した.これらの整理では,百件以上の実験データが収集された.壁土の強度と弾性係数,密度などが整理されている.その上で,申請者らが行った壁土圧縮試験,土壁実験の結果と押し込み試験の結果の相関関係を調べた. (2)実大の土壁実験の試験前後で柔さ計測システムを用いて,壁土の破壊状況を把握することを,平成27年度とは施工者が異なる別の実験試験体で試みた.しかしながら,計測ミスと思われる結果が多く(3)の検討をすることとした. (3)壁土の強度や堅さの性能を押し込み試験による「柔さ計測システム」で評価する方法を継続して検討した.これまでは球座を用いた圧子により結果を評価していたが,砂粒などの影響が測定結果に反映され,計測ミスと思われる結果が多いことから,新たに平圧子を特注して,再評価を試みた.対象物(平板)に対して,圧子が平板となり,また圧子面積を大きくしたことから,平均的な結果を取得しやすくなった.(1)のデータベースと押し込み試験の結果を今後,再評価する予定である. (4)伝統木造のための数値解析法FERT-PWで土壁を取り扱うため,京土壁の繰り返し載荷実験結果を基に,壁土のみの履歴曲線モデルを作成する方法を提案した.このモデル化方法では与えるパラメータは最大耐力のみでよい.また,動的解析法を開発するために,解析手法(増分摂動法)の計算速度向上を検討し,新たに高次の摂動係数を用いる方法と定時間刻みによる増分摂動法により計算速度が向上する方法を提案した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
壁土の強度試験の結果関するデータベースを充実させることができ,今後の押し込み試験結果を評価するための基礎データの構築が順調に進んだ.また,押し込み試験の評価は,圧子形状を変更する事で,計測ミスを減らすことができるようになった.あらたに検討し始めた平圧子による計測結果について,今後,検討を要する. また,木造解析法の開発は順調に進んでおり,土壁の復元力特性モデルを,繰り返し載荷実験の結果を統計的に処理した上で用いており,他地域の土壁にも適用可能と思われる手法を構築することができた.さらに,提案した土壁の復元力特性モデルに必要なパラメータは最大耐力のみで良いことが大きな特徴である.解析法は平成28年度にコーディングに注力したい.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に検討した平圧子を用いた押し込み試験による評価を,平成28年度に実施する実大土壁実験の試験体とその壁土圧縮試験体で試みる.この結果と,平成27年度に作成した壁土の圧縮試験のデータベースを用いて,土壁の健全度診断法を構築する.また,伝統木造建物の崩壊挙動解析法の開発は,平成27年度に開発した土壁の復元力特性モデルをFERT-PWに組み込むべく,コーディングを行う.その上で,伝統木造建物の構面の実験をシミュレーションすることを計画している.
|
Causes of Carryover |
平成27年度に柔さ計測システムの改良を加えるため,圧子形状等の検討を進めたが,その段階で装置の故障があり,この修理を待ち,想定していた改良の一部のみを行ったため.また,平成27年度に計画していた伝統木造建物の解析ソフトウェアの購入について,新バージョンの発表があったため,平成28度に購入することとしたため.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度は,柔さ計測システムの結果の評価精度の向上を目的とした壁土の圧縮試験を行う予定である.そのため,壁土圧縮試験においてポアソン比の測定を行うための画像解析による計測システムに費用を使用する.また,数値解析法の開発に使用する予定である.
|