2016 Fiscal Year Research-status Report
照射欠陥材料の水素同位体吸蔵・放出特性に関するプラズマ照射エネルギー依存性研究
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15K18309
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
矢嶋 美幸 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 特任助教 (70749085)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 核融合 / 照射損傷 / 水素同位体 / プラズマ壁相互作用 / 拡散 / 昇温脱離ガス分析 / 重イオン照射 / 中性子照射 |
Outline of Annual Research Achievements |
核融合炉の実現において、核融合燃料でありかつ放射性物質であるトリチウムの炉内保持量の正確な把握と制御は、経済性および安全性の観点から必要不可欠である。核融合装置のプラズマ対向壁材料としては、水素同位体との化学反応が無く、高い融点を持つタングステンの使用が検討されており、タングステンと水素同位体の相互作用は非常に重要な研究課題として位置づけられている。通常の環境ではトリチウム保持量が少ないタングステンであるが、核融合反応により生成された中性子や高エネルギーイオンに曝されると、材料内部に照射欠陥が形成され、この欠陥に多量のトリチウムが捕獲・保持されてしまう可能性がある。そこで本研究では、既存の中性子照射タングステン試料に対して、管理区域内で稼働できる昇温脱離ガス分析装置付き小型プラズマ照射装置(東北大学所有)を用いることで、大気開放することなく水素同位体の吸蔵・放出特性に対する中性子照射効果について明らかにすることを目的とする。 当該年度の研究成果は下記の通りである。(1)未照射試料および重イオン照射材料を用いて重水素プラズマの密度・エネルギー、試料ステージに流れる空冷用ガスの流量を変化させ、試料の表面温度制御条件を明らかにした。(2)中性子照射タングステンに対する重水素プラズマ照射実験を実施し、拡散係数を実験的に導出した。特に研究成果(2)で行った中性子照射試料に対する重水素プラズマ照射実験は国内初の試みであり、酸化膜の影響を排除したという点においては、世界初の成果となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに、事前に未照射試料および重イオン照射材料を用いてプラズマ照射および昇温脱離ガス分析の最適条件を明らかにした後、中性子照射材料を用いた実験を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
重イオン照射により中性子照射と同程度の損傷量を有する試料を作製し(京都大学との共同研究を利用)、重イオン照射と中性子照射による損傷の違いを、透過型電子顕微鏡および陽電子寿命測定装置を用いて調べ、照射損傷の水素同位体保持特性への影響を明らかにする。加えて、TMAP7(Tritium Migration Analysis Program version7)コードを用いてトラッピングエネルギーの導出および重水素拡散挙動の評価を進めていく。
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Causes of Carryover |
初年度に本科研費以外の経費(自然科学研究機構の支援「若手女性研究者のスタートアップ経費」)から旅費を算出することが可能であったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
高エネルギー重イオン照射施設使用料と出張旅費としての使用を計画している。
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