2016 Fiscal Year Research-status Report
超臨界水を用いた環境試料に対する放射能分析前処理法の開発
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15K18323
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
永岡 美佳 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, バックエンド研究開発部門 核燃料サイクル工学研究所 放射線管理部, 技術・技能職 (60747658)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 環境試料 / 放射能 / 有機物分解 / 超臨界水 / ウラン |
Outline of Annual Research Achievements |
東電福島第一原発事故後、生活環境における放射能(ストロンチウム-90(90Sr)、セシウム-134(134Cs)、セシウム‐137(137Cs)等)が注目され、多くの研究機関等で調査が行われている。これらの放射性核種のうち、α線及びβ線放出核種の濃度を測定するためには、大量の酸溶液を用いた有機物分解が必要であり、化学設備の腐食及び環境への影響、分析作業者への負荷が問題となっている。そこで本研究では、酸溶液の代わりに圧力及び温度を制御することで有機物の分解が可能である「超臨界水(若しくは亜臨界水)」を用いることで、放射能分析の効率化及び酸廃液量の削減を目指した。 平成27年度より、土壌試料を対象として、酸溶液の代わりに、超臨界水を用いた有機物分解の検討を行ってきた。平成28年度には、平成27年度に取り組んだ土壌試料について引き続き検討するとともに、灰化又は乾燥させた海藻試料について、回分式反応器を用いて反応条件(反応温度、反応時間等)を変化させて、全有機炭素量変化等から有機物分解の適用可能性を検討した。また、反応後の溶液試料目的元素の濃度についても誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES)及び誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)で測定を行い、調査した。 その結果、灰化した海藻試料について、超臨界水を用いた有機物分解については適用可能性が示唆されたが、ストロンチウムは溶液中には抽出されていなかった。一方、乾燥させた海藻試料については、ストロンチウムが溶液に抽出される可能性が示唆されたが、平成29年度に引き続き調査を続けていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度より、自身の業務内容の変更があり、そのため予定より研究に割ける時間が少なくなってしまった。 また、乾燥させた海藻試料を用いて超臨界水で反応させた後、酸溶液の添加により予期しない沈殿が発生した。この沈殿中に目的核種が来ている可能性が示唆されたため、別途沈殿物に関して文献調査、追加実験等を行った。 その他、環境試料中の目的元素組成、化学状態確認を目的として、東北大学のXPSを使用予定であったが、装置の故障に伴い平成28年度内の使用ができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
乾燥させた海藻試料において、超臨界水を用いた前処理法を検討し、適用可能性を検討する。また、超臨界反応後に目的核種が溶液試料、析出(沈殿)試料のどちらに存在しているか引き続き調査を行い、反応後の分析法も検討する。
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Causes of Carryover |
加熱浴装置一式の購入を予定していたが、装置の性能検討状況により、平成28年度には購入しなかった。また、その他業務及び研究の都合上、予定していた出張回数に満たず、使用予定額にまで達しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
加熱浴装置一式の性能検討を引き続き実施するとともに、研究内容について検討するための出張、反応管等の消耗品の購入を行う。
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