2015 Fiscal Year Research-status Report
多様な生得的行動を制御する神経領域:内側視索前野の機能解剖学的解析
Project/Area Number |
15K18364
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
恒岡 洋右 東邦大学, 医学部, 助教 (50549011)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 内側視索前野 / 養育行動 / 性行動 / 攻撃行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトを含む哺乳類において内側視索前野は、内分泌情報や環境情報、他個体の情報などの社会的情報を統合し、下流の複数の情動に関わる神経領域を制御すること、性行動や養育行動、攻撃行動などの生得的な社会行動を制御する中枢であることが古典的な破壊実験や投射解析から示唆されてきた。また、社会行動に限らず、睡眠や摂食、体温調節などの多岐に渡る生命活動の根源的機能を担う領域としても知られている。内側視索前野は動機づけの神経機構研究においてその重要性が認識されてきた一方で、形態的・機能的複雑性が研究の障害となり、ブラックボックスとして扱われることも少なくなかった。このような背景を鑑みて、申請者らは内側視索前野にどのような種類の神経細胞が分布するかを調べ、その解剖について再検討し、細分化した領域がどのような行動に関連するかについて研究を進めてきた。本研究では、内側視索前野がどのようにして複数の行動を制御しているのかをマウスモデルを用いて検討する。予備的データから、内側視索前野にはそれぞれの行動を制御する特異的な神経細胞の存在が示唆されている。このデータを元に複数のCre-loxp系を用いた遺伝子導入を行い、分布する細胞の種類と機能、下流の神経ネットワークを対応させることを目的とした。 内側視索前野のどの種類の細胞が、性行動・養育行動・攻撃行動・摂食行動のうち、どの行動に関連するのかを対応付けるため、ISH法を用いた多重染色により神経種の同定が完了し、各細胞ごとに神経活性の操作を開始するとともに細胞ごとのトレーシング解析を始めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は遺伝子改変マウスの導入及びウイルスの作成、行動の予備実験等を行った。研究開始前に導入済みであった2系統については戻し交配が終了し、実験を開始した。他の3系統については導入及び戻し交配を行うとともに、creの発現を確認した。ウイルスについては10^13コピー/mlという高いタイターで精製に成功し、実験を開始している。現在のところ順行性トレーシング解析を開始し、養育行動については1系統で特異的に阻害が見られる系統を見出している。 ただし、シナプス越え順行性トレーシングについては予想と異なり、シナプス越えを確認できておらずさらなる検討が必要と思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
ほぼ予定通りに研究が進んでいる。今後は今年度の予備実験のデータをもとにサンプル数を増加させるとともに、戻し交配の終わったマウスから優先的に本実験を開始する予定である。また、研究の過程で各行動の連関が見られたため、この現象のメカニズムの解明に関しても申請計画書から外れない範囲で研究を推進していく予定である。
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