2015 Fiscal Year Research-status Report
時期特異的カルシニューリン活性制御による統合失調症様表現型の探索
Project/Area Number |
15K18379
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
中尾 章人 藤田保健衛生大学, 総合医科学研究所, 助教 (30748926)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 精神疾患 / モデルマウス / 行動解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
前脳特異的なカルシニューリン欠損マウスは、顕著な作業記憶の障害、活動量の亢進などの統合失調症様の表現型異常を示す。このことから前脳特異的カルシニューリン欠損マウスは妥当性の高い統合失調症モデルマウスであると考えられる。しかしながら、カルシニューリン機能の低下が「いつ、どのくらいの期間続く」ことが、種々の統合失調症様の表現型異常を引き起こすのかは不明である。本計画では、内在性のカルシニューリンインヒビターの一つであるZaki4に着目し、doxycycline投与により任意の時期にZaki4の発現を抑制することが可能な、カルシニューリン活性を時期特異的にコントロールできるマウス(tTA/Zaki4ダブルトランスジェニックマウス)を使用した。平成27年度は、行動解析用のtTA/Zaki4ダブルトランスジェニックマウスを大量に繁殖させるための掛け合わせを行っており、平成28年度も引き続き行う予定である。tTA/Zaki4ダブルトランスジェニックマウスは、doxycyclineを与えない限りZaki4が発現するため、カルシニューリン活性が抑制された状態にある。このマウスを用いて以下の行動テストを行った。8方向放射状迷路テストでは作業記憶の減弱が観察され、高架式十字迷路テストやポーソルト強制水泳テストでは活動量の増加が観察された。これらの結果は、前脳特異的なカルシニューリン欠損マウスの表現型と整合性の高いものであった。聴覚性驚愕反応・プレパルス抑制テストでは、驚愕反応の減弱が観察され、プレパルス抑制に差はなかった。この結果を解釈するにあたり、驚愕反応の大きさとプレパルス抑制の相関を考慮する必要があるが、未だに議論のあるところである。この相関に関しては、当研究室のおおよそ180系統のマウスに対して網羅的行動バッテリーを行った結果を用いて、現在メタ解析を進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
tTA/Zaki4ダブルトランスジェニックマウスは、doxycyclineを与えない限り内在性のカルシニューリンインヒビターであるZaki4が発現するため、カルシニューリン活性が抑制された状態である。現在のところ、doxycyclineを与えない時のマウスの行動表現型が、前脳特異的なカルシニューリン欠損マウスの表現型と整合性の高い結果が得られている。この結果は、今後の時期特異的にdoxycyclineを与えてZaki4の発現を落とし、カルシニューリンの活性を制御したマウスを用いて実験する際の適切なコントロールとなるものである。現在、実験に必要な数のtTA/Zaki4ダブルトランスジェニックマウスの繁殖を進めており、研究はおおむね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、繁殖を進めているtTA/Zaki4ダブルトランスジェニックマウスにdoxycyclineを与えてZaki4の発現を落とし、時期特異的にカルシニューリンの活性を制御しながら行動解析を行う。同時に、doxycyclineによってカルシニューリン機能がどの程度制御されているのかを明らかにするために、カルシニューリン活性の測定を予定している。カルシニューリンの前脳特異的ノックアウトマウスにおいて、精神疾患の有望な中間表現型の候補である海馬歯状回の神経細胞が擬似的な未成熟状態にある「未成熟歯状回」が観察されていることから、時期特異的にカルシニューリン活性を制御したマウスの歯状回の成熟度についても今後検討を進めていく予定である。加えて、前脳特異的なカルシニューリン欠損マウスの海馬歯状回において、リン酸化されたCREBの発現が変化していることも明らかになりつつあるので、これに着目したウイルス等を用いるレスキュー実験も計画中である。
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Causes of Carryover |
現在tTA/Zaki4ダブルトランスジェニックマウスの繁殖を行っているため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は上記のマウスを用いて時期特異的にカルシニューリンの活性を制御しながら行動解析を行い、カルシニューリン活性の測定も行う。精神疾患の中間表現型の候補である「未成熟歯状回」についても今後検討を進めていく予定である。加えて、ウイルス等を用いたレスキュー実験も計画中である。
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[Journal Article] Seishiro Sawamura, Masahiko Hatano, Yoshinori Takada, Kyosuke Hino, Tetsuya Kawamura, Jun Tanikawa, Hiroshi Nakagawa, Hideharu Hase, Akito Nakao, Mitsuru Hirano, Rachapun Rotrattanadumrong, Shigeki Kiyonaka, Masayuki X. Mori, Motohiro Nishida, Yaopeng Hu, Ryuji Inoue, Ryu Nagata, Yasuo Mori2016
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[Journal Article] Compromised maturation of GABAergic inhibition underlies abnormal network activity in the hippocampus of epileptic Ca2+ channel mutant mice, tottering2015
Author(s)
Akito Nakao, Takafumi Miki, Ken Shimono, Hiroaki Oka, Tomohiro Numata, Shigeki Kiyonaka, Kaori Matsushita, Hiroo Ogura, Tetsuhiro Niidome, Jeffrey L. Noebels, Minoru Wakamori, Keiji Imoto, Yasuo Mori
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Journal Title
Pflugers Archiv - European Journal of Physiology
Volume: 467
Pages: 737-752
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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