2015 Fiscal Year Research-status Report
全ゲノム手法から見えてきた新規殺菌剤作用点「タンパク質プレニル化機構」の解析
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15K18655
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
泉津 弘佑 滋賀県立大学, 環境科学部, 助教 (20579263)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 殺菌剤 / 作用機構 / 耐性化機構 / 植物病原菌 / プレニル化 / ゲラニルゲラニルトランスフェラーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず、トウモロコシごま葉枯病菌(Bipolaris maydis)の野生株にC406Y変異型のゲラニルゲラニルトランスフェラーゼ遺伝子(BmGGT1)を導入する再試験を行った。その結果、予備試験の結果と同様に、遺伝子導入株は完全なトルニファニド耐性株となった。このことから、BmGGT1遺伝子はトルニファニドの作用ターゲットの可能性が強く示唆された。そこで野生株の持つBmGGT1遺伝子の遺伝子破壊試験を試みた。その結果、通常は見られない強いメラニン化を伴う非常に小型のコロニーが多数得られた。ゲノム抽出の結果、この菌株は遺伝子破壊された核と野生型の核を持つヘテロカリオンであった。一方で、完全な遺伝子破壊株を得ることは出来ず、BmGGT1は致死遺伝子である可能性が強く示唆された。得られたヘテロカリオン株では、強いメラニン化を伴ったこん棒状に肥大した菌糸が多数観察された。この形状は、トルニファニド作用時の菌糸形態変化と非常に類似していることから、トルニファニドの作用はBmGGT1の機能欠損によるものであることが示唆された。次に、BmGGT1遺伝子の変異とは異なる原因(現在のところファルネシルトランスフェラーゼ遺伝子変異株と考えている)でトルニファニドに耐性化しているTFR1株を用いれば、BmGGT1遺伝子の破壊が可能ではないかと仮説を立てた。しかし、遺伝子破壊を試みた結果は野生株の場合と同様であり、強いメラニン化とこん棒状肥大を伴う菌糸のヘテロカリオン株のみが得られ、完全な遺伝子破壊株は得ることができなかった。以上の結果より、トルニファニドは致死遺伝子であるGGT1の機能欠損を起こしている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究により、ゲラニルゲラニルトランスフェラーゼをコードするBmGGT1遺伝子の破壊試験を試み、致死遺伝子の可能性が高く、その機能欠損が起きた場合にはトルニファニド作用時と類似の菌糸形態が認められることが明らかとなった。このことは、本研究の仮設を強く支持するものであり、大きな進展といえる。その他に計画している実験についても、すでに着手しており、次年度にさらに研究を発展させることが十分に可能であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず、トルニファニドがタンパク質プレニル化の阻害活性を持つか否かをmCherry-CaaX導入株およびRHO1-eGFP株を用いて実証する予定である。さらに、トルニファニドが本来作用しない植物病原菌種(ウリ類炭疸病菌および灰色かび病菌)を用いて、GGT1遺伝子がトルニファニドの作用ターゲットであることを分子遺伝学的手法で実証する。具体的には、これらの植物病原菌種の持つGGT1遺伝子を導入した場合に、トウモロコシごま葉枯病菌がトルニファニド耐性となるか否かの検証を行う。また、トウモロコシごま葉枯病菌由来のGGT1遺伝子をこれらの植物病原菌種に持たせることで、トルニファニドが毒性を発揮することができるかについての検証をすすめる。
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Causes of Carryover |
研究計画上、1年目よりも2年目に多くの遺伝子組換え株の作出およびその培養装置が必要となるため、繰越を行った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
遺伝子組換え株作出のための試薬類、培養器具、および培養装置への使用を計画している。
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