2016 Fiscal Year Research-status Report
宿主細胞接着因子を標的とした新規滑走細菌症ワクチンの開発
Project/Area Number |
15K18732
|
Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
楠本 晃子 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教 (60535326)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | バクテロイデス / 滑走運動 / 接着 |
Outline of Annual Research Achievements |
滑走細菌症は様々な海水魚で発生し、国内外の稚魚生産場や養殖場で問題となっている細菌感染症である。日本の養殖魚種では本症に使用可能な治療薬はなく、また、ワクチンもない。本研究は、原因菌Tenacibaculum maritimumに対するワクチン開発を目指す。 ワクチン候補分子として菌体表面に存在する分子に着目した。 T. maritimumが属するフラボバクテリウム科の菌には、固形物に張り付き、固形物の表面を這うように動く運動(滑走運動)を行う菌種が多数知られている。滑走運動を行う病原細菌では滑走のための接着因子が宿主への定着に関与することが知られている。そこで、本研究ではT. maritimumの接着因子がワクチンになりうると考えた。本菌の滑走運動の機序に関する研究報告はこれまでにないため、滑走運動について研究がなされている同科のFlavobacterium johnsoniaeの滑走運動関連遺伝子群に着目した。T. maritimumにおいても、接着因子をコードするsprB遺伝子およびremA遺伝子を含め、すべての滑走関連遺伝子が保存されていることが分かった。また、紫外線照射変異誘導によって作製した滑走変異株の中に、gldJ遺伝子、gldK遺伝子、sprB遺伝子に変異を持つ株が見つかった。これらの遺伝子はT. maritimumにおいても滑走運動に重要な役割を持つことが予想される。SprBのワクチン分子としての可能性が示唆された。 ワクチン分子は菌株を問わず菌体表面に発現していることが望ましい。T. maritimumに感染するファージを分離し、その中に、溶菌する宿主域が広いファージを見つけた。このファージは溶菌しない菌株の菌体表面にも結合することが分かった。本ファージのレセプター分子は幅広い菌株で発現している可能性が高く、ワクチン分子候補となりうる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当該年度の当初に大学における業務が急増したため、研究活動への十分な時間が確保できなかった。また、大学内の配置換えに伴うオフィスおよび実験室の移動もあり、研究活動が長期にわたり中断を余儀なくされた。特に、業務増加と配置換えは急な決定であったため、研究活動の計画が大きく狂うこととなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
滑走変異株の変異解析を進め、T. maritimumの滑走運動に関係する遺伝子を探索する。SprB組換えタンパク質を作製し、本タンパク質に対する抗体を作製する。抗体を用いて運動解析を実施し、滑走運動におけるSprBの機能を調べる。また、T. maritimumのファージのレセプター分子を同定する。
|
Causes of Carryover |
予期せぬ大学業務の増加と配置換えによる研究活動中断によって、計画が遅れたため、繰越金が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越し分は次年度の消耗品購入および旅費に使用する予定である。
|