2015 Fiscal Year Research-status Report
プリン作動性受容体P2Y6の機能多様性と心臓リモデリングにおける役割
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15K18883
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
西村 明幸 生理学研究所, 生体情報研究系, 特任助教 (00457152)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | G蛋白質共役型受容体 / 心血管リモデリング |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞外ヌクレオチドにより活性化されるプリン作動性G蛋白質共役型受容体(GPCR)の一種であるP2Y6Rが、虚血や高血圧など様々な外的負荷によりもたらされる心血管系組織の病的な構造改変(リモデリング)に与える影響を検討した。アンジオテンシンII(Ang II)による昇圧作用を野生型マウスとP2Y6R欠損マウスで比較したところ、欠損マウスではAng IIのよる昇圧作用及び、血管中膜の肥厚が抑制されることが明らかとなった。野生型、P2Y6R欠損マウスそれぞれから血管平滑筋細胞を単離し、Ang II応答性を比較したところ、欠損マウス由来の細胞では細胞内カルシウム応答が抑制されることを見出した。そのメカニズムとして申請者はアンジオテンシンIIに対する受容体であるAT1RがP2Y6Rとヘテロ二量体を形成していることを明らかにした。通常、アンジオテンシンIIにより活性化されたAT1Rはβアレスチンを介してインターナリゼーションされるのに対して(脱感作作用)、P2Y6Rとヘテロ二量体を形成したAT1Rではインターナリゼーションが抑制されておりG蛋白質下流の応答が増強されていた。 Ang IIは成体由来の血管平滑筋細胞では肥大応答を誘導するのに対して、胎児由来の細胞では増殖応答を誘導する。胎児と成体由来の血管平滑筋細胞でのP2Y6R遺伝子の発現量を調べたところ、発生に伴い上昇することを見出した。Ang IIによる肥大応答はG蛋白質依存経路、増殖応答はβアレスチン依存経路を介して起こること、そして加齢に伴いAT1R-P2Y6R複合体が増加することでAng IIの応答性がβアレスチン依存的な増殖応答からG蛋白質依存的な肥大応答に変化することが明らかとなった。以上の結果から、加齢に伴うAT1R-P2Y6R複合体の増加が高血圧リスク上昇に関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
P2Y6R欠損マウスは横行大動脈狭窄術による圧負荷刺激に対して脆弱性を示す。P2Y6Rのリガンド応答性、物理刺激応答性どちらの機能が圧負荷適応性に重要であるかを検証するために、一方の応答性を欠失させたP2Y6R変異体を作成し、心臓特異的にP2Y6R変異体をレスキューするアデノ随伴ウイルス実験系を確立した。レスキュー実験に必要となる大量のP2Y6R欠損マウスを現在準備中である。 圧負荷以外の刺激に対するP2Y6R欠損マウスの応答性を検討したところ、P2Y6RがアンジオテンシンIIによる昇圧作用に関与することを明らかにした。血管平滑筋細胞においてP2Y6Rは加齢依存的に発現上昇し、AT1Rと複合体を形成することで高血圧リスク上昇に関与することを明らかにした。以上の結果はScience Signaling誌に掲載され、国内外のいくつかの新聞、ネットニュースサイトに取り上げられた。
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Strategy for Future Research Activity |
心臓リモデリングにおけるP2Y6Rのリガンド応答能、物理刺激応答能それぞれの役割を明らかにしていく。そのために、アデノ随伴ウイルスを用いてP2Y6Rリガンド応答能、物理刺激応答能の一方を欠失させたP2Y6R変異体をP2Y6R欠損マウスに心臓特異的にレスキューする。そして各マウスの圧負荷に対する応答性を心機能測定、形態学的解析、肥大や線維化マーカー分子の発現から比較検討する。圧負荷としてはこれまで横行大動脈狭窄を行ってきたが、P2Y6Rは圧負荷に脆弱であり、多くのマウスが術後1週間以内に死亡してしまうために心機能解析には多くのマウスが必要となっている。そこで腹部大動脈狭窄や運動負荷などの比較的弱い圧負荷刺激も検討する。GPCRはG蛋白質以外にβアレスチンを介してシグナルを伝達する。P2Y6Rリガンド活性、物理刺激活性でG蛋白質経路、βアレスチン経路のどちらの経路が活性化されるか、そして各経路を介して引き起こされる細胞応答を明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
P2Y6R欠損マウスの繁殖に時間がかかっているため、アデノ随伴ウイルスを感染させたP2Y6R欠損マウスに大動脈狭窄術を行い、心機能解析を行う実験は平成28年度に執り行う。そのための費用を平成28年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度はマウス病態モデルの作製とその飼育、そして個体レベルでの機能解析を行うために物品費が助成金の主要な使用目的となる。さらには2016年5月仙台で行われる国際NO学会への出張費、さらには海外学会での研究発表のための出張費を計画している。
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[Journal Article] The purinergic P2Y6 receptor heterodimerizes with the angiotensin AT1 receptor to promote angiotensin II-induced hypertension2016
Author(s)
A. Nishimura, C. Sunggip, H. Tozaki-Saitoh, T. Shimauchi, T. Numaga-Tomita, K. Hirano, T. Ide, J-M. Boeynaems, H. Kurose, M. Tsuda, B. Robaye, K. Inoue and M. Nishida
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Journal Title
Science Signaling
Volume: 9
Pages: ra7
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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