2015 Fiscal Year Research-status Report
ゲノムワイド関連解析による小児白血病の薬剤感受性に関する遺伝因子の解明
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15K18932
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
田中 庸一 北里大学, 薬学部, 助教 (40525341)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 小児白血病 / 遺伝子多型 / 6-メルカプトプリン / メトトレキセート / L-アスパラギナーゼ / 有害事象 / ゲノムワイド関連解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
小児白血病の治療において、複数の薬剤が使用される。使用薬剤の薬物動態や反応性については、患者個々に違いがある。治療中に薬剤による重篤な副作用の発現や過敏反応が原因で治療の内容を変更する必要のある患者や中断を余儀なくされる患者も存在している。このような患者間における薬剤への反応性の違いの1つとして、遺伝要因である遺伝子多型がある。遺伝子多型があることで、薬剤への反応性や薬物動態に違いがあることは、これまでに欧米人を中心に報告されているが、日本人を含むアジア人を対象とした研究報告は少ない。また、人種により遺伝子多型頻度も異なり、さらに、治療プロトコルも異なる。そのため、日本人の治療において他の人種で得られた薬剤の反応性に関わる遺伝要因を利用できるかは不明であることから、日本人患者の治療経過と遺伝要因の関連性を検討し、有用な遺伝要因を明らかにする必要がある。そこで本研究では、日本人小児白血病患者で使用される薬剤の中でも、特に治療の中断やプロトコルの変更が必要となる重篤な副作用が発現する頻度が高い薬剤である6-メルカプトプリン、メトトレキセート、L-アスパラギナーゼによる治療とその治療に関連する有害事象について、ゲノムワイド関連解析により候補遺伝子を決定する。明らかになった薬剤反応性に関連性の高い候補遺伝子については、遺伝子多型の影響を他のコホートで確認する再現研究やin vitroによる機能解析を行うことにより、薬剤反応性の原因を明らかにする。本研究を通して、患者間に薬剤反応性の違いが大きい薬剤について、患者の遺伝要因を基にした治療の選択や薬剤の投与量の個別化の実現を目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
現在、日本人小児白血病患者411例について、マイクロアレイによる遺伝子多型情報とL-アスパラギナーゼによる有害事象の情報が得られている。L-アスパラギナーゼの有害事象についてゲノムワイド関連解析により、関連遺伝子多型の解析を行った。その結果、ゲノムワイド関連解析において一般的に統計的有意とされるP値 < 5 x E-8に達した遺伝子多型を見つけることはできていない。そのため、ゲノムワイド関連解析でL-アスパラギナーゼの有害事象の発現有無に関連性の高い候補遺伝子について、他の母集団で再現性があるかについて確認を行うこととしている。また、6-メルカプトプリン、メトトレキセートによる治療経過の調査を、遺伝子多型解析を行った患者について調査を進めているが、各施設での倫理審査等の承認が遅れており、予定通りに情報を得られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、共同研究施設での倫理審査による承認が得られ次第、6-メルカプトプリンやメトトレキセートによる患者の治療経過を調査し、ゲノムワイド関連解析を行うことで、日本人小児白血病患者における薬剤反応性に関連性のある候補遺伝子の選定を行う予定である。P値 < 5 x E-8に達する遺伝子多型が見つからない場合には、候補遺伝子を決定し、その影響について再現性の確認試験を他のコホートでTaqMan Probe法によって行う。そのため、再現性を確認するコホートについても必要な患者情報の収集を行えるように倫理審査等の手続きを行い、患者の臨床情報を調査する予定である。 再現性の得られた遺伝子多型の含まれる遺伝子については、シーケンサー等を用いて詳細に遺伝子解析を行い、薬剤の反応性に関連するコード領域を特定する。
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Causes of Carryover |
平成27年度にゲノムワイド関連解析で明らかとなった日本人小児白血病患者の治療によるした副作用の発現に関連性の高い遺伝子多型について、他のコホートにおいて再現性を確認するためにTaqMan Probeを用いた関連解析を行う予定であった。しかし、候補遺伝子の絞り込みが遅れており、再現性の検討を行う段階まで到達する事ができず、TaqMan Probeの購入に至っていない。そのため、TaqMan Probe購入費として計上していた費用が使用できていない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ゲノムワイド関連解析の結果より、関連性の高いと考えられる遺伝子多型を選択し、現在遅れているTaqMan Probeを用いた関連解析による再現性の検討を本年度内に行う。そのため、本年度内にTaqMan Probeを購入することを計画している。
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