2015 Fiscal Year Research-status Report
残存HIVの転写活性化を規定する宿主内環境因子の同定
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15K19117
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Research Institution | Microbial Chemistry Research Foundation |
Principal Investigator |
石坂 彩 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 研究員 (70746859)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | HIV / 免疫活性化 / 潜伏感染 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々が考案したHIV LTRの転写活性をウイルス由来の短鎖RNAを指標として鋭敏に検出する定量的RT-PCR法は、体内に潜む転写のアクティブな感染細胞の検出に成功した。我々はこの検出法を用いて、抗ウイルス薬により血漿中のウイルス量が検出限界未満となりながらもHIV LTRの転写活性化が検出される患者では、免疫力の指標であるCD4+細胞数の十分な回復が得られにくいという事実を見出している。この現象は、残存ウイルスの転写活性化が患者の免疫力改善を妨げる何らかのリスクを反映していることを意味する。しかし現在、残存感染細胞の活性化と体内環境の相関については未解明な部分が多い。本研究では、上述で見出した残存感染細胞の活性化を惹起する細胞内環境要因の解明を進め、残存ウイルスの転写活性化と免疫力の回復不全の因果関係の理解を試みることとした。
平成27年度はCD4+およびCD8+T細胞の活性化・疲弊に関する各種表面マーカーの発現を解析し、短鎖RNAと炎症との相関を中心にウイルスの転写活性が高いレベルで保持される環境要因の同定を進めた。その結果、血漿ウイルス量が検出限界未満となりながらもウイルスHIV LTRの転写活性が見られる患者では、CD8+T細胞表面におけるCD38およびHLA-DRの発現が上昇していることが分かった。この事実は感染細胞の転写活性化が起きている患者では血漿ウイルス量の抑制が免疫の鎮静化に結びついていないことを表しており、患者の病態を把握する上でも感染細胞の転写活性を測定することが重要であることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
残存感染細胞の活性化と相関のある患者体内の環境要因として、免疫の持続的な活性化を同定した。この内容を短鎖RNAの検出方法と併せて学術論文として発表した(Journal of Virology, in press)。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、短鎖RNAの発現量とin vitro におけるウイルス産生能の関係や、CD4細胞数を指標とした治療効果との関係を精査し、残存ウイルスが病態に及ぼす影響の本質的な理解に努める。
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Causes of Carryover |
平成27年度は実験計画が順調に遂行されたため、若干の未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の物品費に組み込む。
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