2016 Fiscal Year Research-status Report
運動と痛みの結びつけにおける認知・神経メカニズムの解明
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15K19190
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
寒 重之 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座助教 (20531867)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 運動時痛 / 結び付け / 脳内メカニズム / 複合性局所疼痛症候群 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに構築した被験者の運動の実施を検出して自動的に痛み刺激を提示する刺激提示システムを用いて、平成28年度は主に心理物理学的実験に取り組んだ。健康成人を対象として、被験者に運動の実施から痛み刺激の提示をおこなうまでの時間を0msから1000msまで100ms間隔でランダムに変化させて、二肢強制選択によって二つに因果関係があるように思うかを答えさせる実験をおこなった。結果としては、運動部位と同じ部分に痛み刺激を提示した場合には、運動の実施から痛み刺激の提示までの間隔が100msを過ぎると急激に因果関係の認識が低下すること、また400ms以上では2つのイベントに因果関係を認めないことが示された。 これに加え、痛み刺激の提示と運動を行う体部位を変えた場合など、予定していた他の心理実験についてもデータの収集およびデータの解析を進めているところである。さらに、今年度は、運動時痛を有する複合性局所疼痛症候群 (CRPS) を有する患者において、脳波の計測をおこなった。CRPSは、外傷や手術の後に、一般的な治癒に必要な期間を超えて、それらでは説明できない痛みが存在する症候群であり、感覚の異常や爪・皮膚などの異栄養性変化、また骨や筋肉の萎縮性変化を示す。片側上肢にCRPSを有する患者10名において、罹患肢(動かすと痛みがある)と健側肢(動かしても痛みはない)をそれぞれ合図に従って動かしてもらい、その際の脳波を計測した。現在、誘発電位および同期性の変化の観点から解析を進め、CRPS患者において運動時痛がある場合の運動と運動時痛がない場合の運動とでは脳活動にどのような違いがあるかを検討しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、平成28年度は心理物理実験を終了し、fMRI実験をおこなって運動と痛みの結びつけに関する脳機能画像データを収集する予定であった。しかし、ボランティア被験者が予定していたほど集まらず心理物理実験の進捗が遅れたことにより、当初予定していた心理物理実験を終了し、fMRI実験を開始することができなかった。一方で、そもそもの予定には入っていなかったが、運動時痛を有するCRPS患者において、脳内情報処理メカニズムを検討するためのデータとして、罹患肢と健側肢の運動時における脳波を計測できたことは、今後の研究のための貴重なデータを得ることができたと言える。以上のことを踏まえ、現在までの進捗状況に関しては「やや遅れている」と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
結果を確定するためには十分なデータ数とは言えないが、これまでに得られた心理物理学的実験データから、運動と痛みの結びつけにおける認知心理学的な特性について、想定していた内容がほぼ確認できた。したがって、これらの知見に基づき、平成29年度中のできるだけ早い時期に脳機能画像研究を開始させる。また、出来るだけ多くの被験者を募って心理物理実験をおこない、次年度前半にはこれを終了させ、平成29年度には当初予定していた通りのスケジュールで本研究を進展・終了させることができるよう考えている。
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Causes of Carryover |
研究の進捗の遅れのため、fMRI実験がおこなうことができず、fMRI実験のための装置使用料、技師謝金および被験者謝金に該当する分の次年度使用額が生じた。また物品費についても、fMRI実験で取得したデータを解析するための計算用サーバの購入を予定していたが、fMRI実験が実施できなかったため計算用サーバの購入は行わなかった。そのため、計算用サーバ購入費として予定していた分についても次年度使用額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度においては、心理物理実験ならびにfMRI実験について実施する予定であるため、被験者謝金ならびにfMRI装置使用料、放射線技師および実験補助者への謝金として使用する予定である。また、計算用サーバの購入費にも充当する。
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