Outline of Annual Research Achievements |
十二指腸乳頭括約筋機能不全(SOD)の疾患概念は一般に浸透しているとは言えず, 標準的診断法, 治療法は未だ確立されていない. 乳頭括約筋圧測定(SOM)はSODの有用な客観的検査法であるが, 高度な技術が必要で, 検査後膵炎の発症率が高い. 2016年に機能性消化器疾患の診断分類であるRome分類がRome IVへ改定され, 旧分類Rome IIIにおけるSOD biliary type 3に相当する症例は内視鏡的乳頭括約筋切開術 (EST)の治療効果が乏しく, SOMを含む侵襲的処置は推奨されなくなった. 我々はRome IIIに基づき診断したSOD患者のガイドワイヤー型圧モニターを用いたSOM結果及び, ESTの治療効果について解析し, Rome IVの妥当性を検討した. SOD患者12例(biliary type 1/type 2/type 3:2例/6例/3例, pancreatic type:1例), 及び対象群として, その他の胆膵疾患患者15例に対し, 計40回のSOMを行い, 乳頭括約筋の収縮圧, 1分間の収縮回数, 収縮時間を測定した. SOD患者は全例ESTを行い, EST後の短期成績(3ヶ月以内), 長期成績(1-2年後, 最長5年間経過観察)について, 腹痛消失/改善/不変/増悪に分けて検討した. SOD患者では他疾患患者に比べて, 収縮圧(中央値:126 vs 92mmHg p=0.037), 収縮回数(中央値:9 vs 5.4回 p=0.021)が有意に高値であったが, 各type間では測定値に差は認めなかった. EST後の短期成績は, 1例で腹痛消失, 11例で改善を認めた. 長期成績は, 1例で腹痛消失, 6例で改善を認めたが, 2例で不変であり, 不変例はいずれもbiliary type 3であった.
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