2015 Fiscal Year Research-status Report
候補遺伝子の網羅的シーケンスによる孤発性ALS病態関連遺伝子の同定
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15K19485
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中村 亮一 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (80723030)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 筋萎縮性側索硬化症 / 次世代シークエンサー / ゲノム / 候補遺伝子 / 脳神経疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態解明、治療法開発のために病態関連分子を明らかにする必要があるが、大部分を占める孤発性ALSの病態関連遺伝子・分子は不明である。本研究の目的は大規模ALS患者コホート等から収集した多数のALS患者のDNA検体を用いて、ゲノムワイド関連解析や家族性ALSにおいて関連が示されてきた遺伝子の網羅的シーケンスを行い、これによりわが国の孤発性ALS患者における既知のALS関連遺伝子変異の頻度を明らかにする、孤発性ALSの発症および臨床像に影響を与えている遺伝子変異の探索、同定を行い、孤発性ALSの病態関連遺伝子を明らかにすることである。 SOD1、ALS2、SETX、SPG11、FUS、VAPB、ANG、TARDBP、FIG4、OPTN、VCP、UBQLN2、SIGMAR1、DAO、NEFH、DCTN1、TAF15、EWSR1、PRPH、GRN、CHMP2B、ZNF512B、PFN1、ATXN2、TFG、C9orf72、RNF19A、SQSTM1、以上の28のALS疾患関連遺伝子のエクソン領域を次世代シークエンサーを用いてハイスループットかつ網羅的に解析するシステムを構築しており、これを活用し、遺伝子解析を施行した。 平成27年度は孤発性ALS 469例、正常コントロール191例の遺伝子解析を行い、3.0%にあたる14例に既知の遺伝子変異を認め、6.8%にあたる32例に新規の病原性が疑われるvariantを認めた。欧米の既報告と比較し、日本ではC9orf72の遺伝子変異の頻度が低く、SOD1遺伝子変異の頻度が高いことが判明し、日本の孤発性ALSでは欧米と遺伝的背景が異なることが示唆された。また、ALS疾患関連遺伝子のvariantは孤発性ALSにも重要な役割を果たしていると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既に469例の孤発性ALS患者および191例の正常コントロールに対して28のALS疾患関連遺伝子のエクソン領域の遺伝子解析を施行した。抽出されたvariantを今日までにALS発症の原因として同定されているもの、ALS発症には無関係であると同定されているもの、またそのどちらでもないものに分類し、それぞれサンガー法で変異の有無を確認している。今まで報告された事が無い、新規の病原性が疑われるvariantに関しては分子生物学的に病原性を証明できないか検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も引き続き、遺伝子解析未施行の残りの孤発性ALS検体(約530例)および新たに集積したコントロール検体(約160例)に対して同様にシーケンスを行った上で抽出されたvariantについて解析を施行する。さらに昨年度施行した症例も含め孤発性ALS患者約1000例の28遺伝子配列データと、正常コントロール約350例のALS疾患関連28遺伝子の配列データを用いて関連解析を実施する。すなわち、これら遺伝子内に存在する遺伝子変異の頻度を孤発性ALSと正常コントロールでLogistic regressionまたはCochran-Armitage testを用いて比較する。孤発性ALS患者で頻度の高い遺伝子変異が見いだされた場合には、その変異の有無による臨床像の特徴を多施設共同前向きALS患者コホートであるJaCALSの横断的・縦断的臨床情報を用いて解析する。進行速度に影響を与えている遺伝子多型、変異の検索にはCox比例ハザードモデルを用いた生存解析を行う。病型や発症年齢に影響を与えている遺伝子多型、変異の検索には群分けを行い、関連解析を行う。また、日本では孤発性ALS患者でSOD1遺伝子変異の頻度が欧米と比較し高く、変異陽性例による臨床像の特徴をJaCALSの横断的・縦断的臨床情報を用いて解析する。 これらの結果から孤発性ALSの病態関連遺伝子が判明し、これにより臨床像に影響を与える遺伝子ならびに進行を規定する蛋白が解明できる可能性がある。症状の進行を規定する蛋白の解明はその蛋白の働きを阻害する薬剤の開発につながり、孤発性ALSの病態解明、治療薬開発に大きく道を開くものとなる。
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Causes of Carryover |
1月以降に使用したDNA合成の支払いが平成28年度になる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度より翌年度にかけて予定しているDNA合成への支払いに充当する。
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[Journal Article] Next-generation sequencing of 28 ALS-related genes in a Japanese ALS cohort2016
Author(s)
Ryoichi Nakamura, Jun Sone, Naoki Atsuta, Genki Tohnai, Hazuki Watanabe, Daichi Yokoi, Masahiro Nakatochi, Hirohisa Watanabe, Mizuki Ito, Jo Senda, Masahisa Katsuno, Fumiaki Tanaka, Yuanzhe Li, Yuishin Izumi, Mitsuya Morita, Akira Taniguchi, Osamu Kano, Masaya Oda, Satoshi Kuwabara, Koji Abe.
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Journal Title
Neurobiology of Aging
Volume: 39
Pages: 219
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] Comprehensive genetic screening of 28 ALS-related genes in a Japanese ALS cohort2015
Author(s)
Ryoichi Nakamura, Jun Sone, Naoki Atsuta, Genki Tohnai, Hazuki Watanabe, Daichi Yokoi, Masahiro Nakatochi, Hirohisa Watanabe, Mizuki Ito, Masahisa Katsuno, Fumiaki Tanaka, Nobutaka Hattori, Yuishin Izumi, Mitsuya Morita, Akira Taniguchi, Koji Abe, Masaya Oda, Koichi Mizoguchi, Ryuji Kaji, Gen Sobue.
Organizer
26th international symposium on ALS/MND
Place of Presentation
Orland (USA)
Year and Date
2015-12-11
Int'l Joint Research
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