2015 Fiscal Year Research-status Report
宿主細胞のオートファジーに着目したインフルエンザ関連肺炎の重症化メカニズム解明
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15K19587
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
小佐井 康介 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (70644433)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | インフルエンザウイルス / 肺炎球菌 / オートファジー阻害薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
インフルエンザウイルスに肺炎球菌が重複感染した肺炎は、治療に抵抗性となり死亡率が高い。この要因の一つとして、重複感染に伴う過剰な炎症が自己の肺傷害を惹起し、重症化に寄与することが挙げられるが、その機序は不明である。 オートファジーは、細胞が低酸素状態や飢餓に陥った際、自己の蛋白や細胞内小器官を消化することでエネルギーを産生して生き残るための仕組みである。近年、このオートファジーは、病原体に対する宿主の免疫機能に深く関与していることが報告されている。 本研究の目的は、インフルエンザ関連死の原因となる細菌感染が合併した病態(重複感染)において、過剰な炎症が生じるメカニズムを宿主細胞のオートファジーに着目して解明することである。 本年度は、まず、肺癌細胞株であるA549細胞を用いてin vitroにおけるインフルエンザウイルスと肺炎球菌の重複感染モデルの作成を行った。このモデルでは、肺炎球菌の単独感染群と比較して、インフルエンザの先行感染がある重複感染群において肺炎球菌のA549細胞への接着・侵入が亢進した。また、それに伴い、炎症性サイトカインの産生も亢進を認めた。重複感染した細胞に対してオートファジー阻害薬を作用させた場合、肺炎球菌の接着・侵入や炎症性サイトカインの産生が抑制された。 重複感染モデルにおいて、薬剤投与の有無による遺伝子発現を比較するため、マイクロアレイを実施した。また、薬剤の細胞傷害性を確認するため、細胞外に放出されたLDHの測定を行った。これらは現在、結果を解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの検討により、オートファジー阻害薬がin vitroにおけるインフルエンザウイルスと肺炎球菌の重複感染モデルに与える影響について解析が進んでおり、概ね順調に進展していると思われる。しかし、マウスモデルにおける検討は、まだ進んでおらず今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、オートファジー阻害薬がどのように作用して、研究実績の概要で述べた結果に至ったのか、そのメカニズムについて検討を行っていく予定である。具体的には、肺炎球菌がA549細胞に接着する因子の発現や炎症を調節する因子への影響を遺伝子レベル・蛋白レベルにおいて検討していく予定である。また、重複感染においてオートファジー阻害薬を作用させることで、オートファジー関連因子がどのように変化するのかを検討する。 in vitroによる検討のみでは生体への影響が評価できないため、今後はマウスモデルを用いてin vivoにおける検討も進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
購入を検討している試薬の価格が、次年度使用額(本年度未使用額)より大きかったため、来年度に繰り越して購入する予定とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
細胞培養に使用する試薬、オートファジー関連因子を検出する試薬、オートファジーや関連する経路の阻害薬、宿主免疫反応を解析するためのELISAキット、マウスなどの購入、情報収集や研究成果を発表するための旅費などに使用する予定である。
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