2016 Fiscal Year Research-status Report
グルココルチコイド受容体の遺伝子多型が血管透過性に及ぼす影響に関する検討
Project/Area Number |
15K19658
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
小笠原 啓 福島県立医科大学, 医学部, 病院助手 (00510348)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | HUVEC / グルココルチコイド / SNP / 血管透過性 |
Outline of Annual Research Achievements |
血管内皮細胞では、glucocorticoid(GC)がglucocorticoid receptor(GR)を介してタイトジャンクションのtightningを起こすことで血管透過性を制御していると言われている。しかし、その詳細は不明な点が多い。 本研究では、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)を用い、TNF-αなどのサイトカインを投与しいったん血管透過性が亢進した状態からハイドロコルチゾンを投与し、経上皮内皮電気抵抗値(TER)の変化を調べる。さらにHUVECからグルココルチコイド受容体Bcl1遺伝子のSNPを調べ、その違いが血管透過性に及ぼす影響を調べることが目的である。 研究の流れは、大きく分けて3つに分かれる。①HUVECの単離培養:当施設で出生した早産児より臍帯を提供して頂き、唐崎らの論文(J UOEH, 18(4): 281-285, 1996)を参考にHUVECを単離培養する。②HUVECからのGRのSNP解析:DNAを分離後、TaqMan法を用い、GRに関して報告されている既知4種のSNP解析を行う。③HUVECの細胞透過性の測定:ハイドロコルチゾン投与前後の細胞透過性を細胞リアルタイムモニタリングシステム( cellZscope® ) により、経上皮内皮電気抵抗値(TER)を経時的に測定する。 平成28年度は、在胎39週のHUVEC1例の単離培養を加えた。また、在胎24週から38週までのHUVECを用い経時的にTER測定した結果、いちばんTERが高値であったのは在胎29週のHUVECであった。この結果から、TERと在胎週数には関連は少ないのではないかという結論にいたった。 グルココルチコイド受容体のBclⅠのSNPが血管透過性に関わることを検討するため、各HUVECからDNAの分離を開始したが、まだSNPは調べていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
・当初、在胎週数が早いほどTERは低く、血管透過性が高いと仮説をたてていたが、そうではなく、HUVEC個々の問題であることが予想された。 ・前年度はHUVECの保存が1例にとどまっており、研究が遅れている。 ・HUVECからのDNA分離を開始したが、遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
HUVECを今年度に13例集めて、合計30例とする。これらのHUVECを用い、 ①TNF-αをはじめとするサイトカインをHUVECに投与してTERを下げた後にハイドロコル チゾンを投与し、TERが上昇するかをみる。ハイドロコルチゾン投与前にグルココルチコイド受容体拮抗薬であるRU486を投与してみる。それでTERが上昇しないならば、タイトジャンクションはグルココルチコイド受容体を介してタイトニングを起こすことの証明となる。 ②HUVECからグルココルチコイド受容体のBcl遺伝子のSNPを調べ、G/G群、G/C群、C/C群の3群に分ける。各群で上記のハイドロコルチゾン負荷試験を行った際、どの群で最もTERの上昇度が高いかを検討する。理論的にはG/G群が最もTERの上昇率が高いはずである。
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Causes of Carryover |
平成28年度は、当初の予想よりもHUVECの検体が収集できなかったこと及びすでに収集したHUVECのSNP解析が滞ったために、試薬代を含む研究費が予想を下回った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
HUVECの収集に励み、ハイドロコルチゾンを使用したTERの測定、SNP解析を行う。研究目的である以下を証明するために次年度使用額も含め、交付された研究費を有効に利用する。 ①ハイドロコルチゾンが血管透過性を改善させること。②ハイドロコルチゾンの作用は、GRを介していること。③HUVECから採取したGRのSNPの違いが血管透過性に影響するかどうかを調べること。
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