2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K19702
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
足立 剛也 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (30573258)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 皮膚免疫 / 免疫恒常性 / 免疫バリア / B細胞 / レジデントメモリー |
Outline of Annual Research Achievements |
皮膚を含む体表面のバリア臓器においては様々な免疫細胞が在住し、外的因子に対する宿主防御を司る。特に、皮膚のTリンパ球は在住型メモリーT細胞と呼ばれ、その総数は血中の2倍にも及び、迅速かつ活発な免疫応答に寄与する。過剰な反応の抑制等、免疫恒常性を保つためにはこれら皮膚在住白血球を制御する緻密なメカニズムが存在するはずであるが、十分に解明されていなかった。本研究では、T細胞と並んで獲得免疫の重要な構成員であるB細胞にも焦点を当て、皮膚在住リンパ球の生理学的機能解明とその制御を目指し、解析を進めている。 初年度は、表皮におけるフローサイトメトリー解析を継続した。CD45+EpCAM-TCRγδ-CD4-CD8-のランゲルハンス細胞、T細胞を除く白血球集団の中で、30%程度がB220陽性であり, そのうち10%程度がIgMを発現していた。これらB220陽性細胞はリンパ節へのhoming receptorであるCD62Lが陰性であり、皮膚に在住する性格が示唆された。しかし、B220陽性細胞中CD19陽性細胞は25%程度、形質細胞もしくはpre B細胞に発現するCD138陽性細胞はわずかであり、当初の予想以上にB細胞の数が少ない可能性が示唆された。 さらに、B細胞の局在の同定、niche形成の有無の確認を行うため、皮膚の免疫蛍光抗体法を用いた観察を行った。野生型マウス皮膚の凍結切片を用いた垂直断面、耳の表皮シートおよび真皮シートを用いた水平断面の免疫蛍光染色を行い、B220陽性、IgM陽性細胞を観察し、毛嚢や真皮線維芽細胞等との関連について検討している。上記フローサイトメトリー解析結果同様、切片で確認される細胞も少ない印象であり、nicheの形成等についてはより詳細な解析が必要となっている。今後、汗腺等皮膚付属器が切り出される断面での観察等追加検討を継続する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
皮膚のフローサイトメトリー解析にて、CD45+EpCAM-TCRγδ-CD4-CD8-B220+細胞におけるCD19およびCD138発現細胞が確認されたこと、免疫蛍光抗体法にてB220陽性およびIgM陽性細胞が確認されたことは大きな進展であった。しかし、当初の予想以上に細CD19陽性およびCD139陽性細胞数は多くなく、その他のB220陽性細胞がどのような細胞集団なのかは同定に至っていない。このため免疫蛍光抗体法における観察もより多くの切片での解析を必要としており、研究の進捗の遅延をきたしている。 また、先行研究においては皮膚在住メモリー型T細胞、皮膚T細胞リンパ腫病態にたいする毛嚢由来のサイトカインの重要性が示唆されたが、毛嚢が存在しない部位、すなわち掌蹠等における皮膚リンパ球の生存因子の供給者については不明なままである。上記によりB細胞の解析には時間を要すると考えられるが、その間に獲得免疫のカウンターパートであるT細胞についての追加解析も行い、情報量を増やしていきたいと考えている。特に、B細胞においては真皮や皮膚付属器周囲において局在を暗示する分布も確認されており、掌蹠においてもこれらの部位に焦点を当てた解析を行うことで、同様の手法を用いた解析を適用することが可能になると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
皮膚のフローサイトメトリー解析にてCD45+EpCAM-TCRγδ-CD4-CD8-B220+細胞の細胞表面マーカーの解析を継続する。また、免疫蛍光染色による解剖学的解析、特に毛嚢や汗腺等皮膚付属器や真皮線維芽細胞との関連について、B細胞、T細胞両者での検討する。特にT細胞については毛嚢の存在しない掌蹠に焦点を当てて観察する。
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Causes of Carryover |
初年度は主に野生型マウスの解析に注力しており、消耗品を主体に研究費を執行可能であった。このため、研究室で所有していた試薬を共用することにより研究費を節約できたことが理由と考えられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定から大きな変更はないが、フローサイトメトリー、免疫蛍光抗体法等消耗品費を中心に使用する予定である。
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