2015 Fiscal Year Research-status Report
大規模研究にて同定された統合失調症のリスク遺伝子の中間表現型解析
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15K19725
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤本 美智子 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (50647625)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 統合失調症 / 中間表現型 / 遺伝子多型 / 遺伝子解析 / 眼球運動異常 / 生物学的精神医学 |
Outline of Annual Research Achievements |
統合失調症の大規模GWASで同定された108ゲノム座位に存在するリスク遺伝子多型を選択してタイピングしている。統合失調症において特徴的に障害され統合失調症のリスクに関わる神経生物学的な表現型である中間表現型には、言語性記憶、視覚性記憶、注意・集中力、遅延再生記憶、言語流暢性、ワーキングメモリー、知能などの認知機能、三次元脳構造画像、拡散テンソル画像やresting stateの機能的MRIなどの脳MRI画像、探索的眼球運動といった神経生理機能などがある。これらの中間表現型と上記のリスク遺伝子多型との関連解析を進めている。特にこの1年においてはタイピング以外にも、中間表現型としての眼球運動異常について解析を進めてきた。統合失調症については以前から注視課題での注視困難、パシュート課題での追跡の拙劣さ、フリービューイング課題での探索眼球運動の減少が知られており、我々はこれらの特徴から統合失調症と健常者との判別ができることを報告している(Miura et al. Schizophr Res. 2014)。既報で用いた判別式では、88%の確率で統合失調症と健常者を判別することができた。判別式には当初、眼球運動検査で得られる5変数(注視課題の注視時間、パシュート課題の水平方向速度ゲイン・注視回数・信号雑音比、フリービューイング課題の追跡距離)を用いていたが、今回研究を進めていく中で、変数を減らしても再現性のあることが確認できた。これらの選択された眼球運動変数を用いて、眼球運動の異常とはどのような脳機能を見ているのか、焦点を絞ってリスク遺伝子多型や画像との関連を調べている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既に被験者のリクルートシステムが整っており、現在、入院外患者をリクルートし、DSM-Vによる診断を行ったうえで、採血および各種の神経生理機能検査、画像検査を行っている。研究に取り掛かるためのサンプル収集は済んでおり、さらにサンプルを増やすための体制が確立されている。またリスク遺伝子多型のタイピングについては予定通り行っている。また中間表現型との関連を調べるため、被験者に対してWAIS-III、WMS-Rなどの心理検査、脳MRI検査、眼球運動検査を行っている。これらの検査の中でも眼球運動検査については、統合失調症と健常者を判別する式を作り、今回サンプル数を増やしてその再現性を確認した。また判別式を形成する眼球運動変数を絞りこんだ。このように、より病態を反映するデータを得るため、各検査方法について改善を行っている。統合失調症と健常者の死後脳サンプルについての実験は、共同研究者と実験計画を調整中である。本サンプルとリンパ芽球サンプルを合わせて、今後、スプライシングバリアントの発現量をリアルタイムPCR法にて測定する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、健常者群および患者群のリクルートを行い、神経心理、脳形態、神経生理といった中間表現型の関連やリスク遺伝子の発現量の程度について、さらにサンプル数を増加して比較検討を進める。また眼球運動検査をはじめ中間表現型を形成する検査方法について、より疾患を反映するデータが得られるよう改善を行っていく。申請者のグループでは包括的遺伝解析研究として、学内外の研究者を中心とした脳表現型の分子メカニズム研究会を発足し、ヒトの脳表現型と遺伝子の関連を検討している。学会および打ち合わせ等は前年度と同様である。 大阪大学では、包括的な臨床・研究システムとして、統合失調症プロジェクト(SP : schizophrenia project)を行っている。SPは、統合失調症専門外来と統合失調症入院プログラムからなる臨床部門と、そこで得られたリサーチソース・データベースを用いた臨床研究部門・基礎研究部門からなる。本研究で用いるサンプルはこのプロジェクトからリクルートしたものであり、申請者は研究協力者である橋本亮太(大阪大学大学院連合小児発達学研究科附属子どものこころの分子統御機構研究センター/同精神医学教室兼任)らと共にSPを運営している。申請者は研究協力者に必要に応じて適切なアドバイスを受けることができる。既に、現在入院外患者をリクルートし、DSM-Vによる診断を行ったうえで、採血および各種の神経生理機能検査を行っている。このように研究に取り掛かるためのサンプル収集は済んでおり、さらにサンプルを増やすための体制が確立されていることにより、本研究を効果的、効率的に推し進めることができる。上記の実験と共に、サンプル収集もこれまで同様に継続して行う。
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Causes of Carryover |
研究計画に沿って研究を進めて必要に応じて執行したが、当初の見込み額と執行額が若干異なったために差異が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画に変更はなく、予定どおりに次年度の研究計画に沿って、さらに研究を発展させるべく有効に使用する予定である。
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[Journal Article] Pharmacogenomic Study of Clozapine-Induced Agranulocytosis/Granulocytopenia in a Japanese Population2016
Author(s)
Saito T, Ikeda M, Mushiroda T, Ozeki T, Kondo K, Shimasaki A, Kawase K, Hashimoto S, Yamamori H, Yasuda Y, Fujimoto M et al
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Journal Title
Biol Psychiatry
Volume: in press
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Whole-exome sequencing and neurite outgrowth analysis in autism spectrum disorder2016
Author(s)
Hashimoto R, Nakazawa T, Tsurusaki Y, Yasuda Y, Nagayasu K, Matsumura K, Kawashima H, Yamamori H, Fujimoto M, Ohi K, Umeda-Yano S, Fukunaga M, Fujino H, Kasai A, Hayata-Takano A, Shintani N, Takeda M, Matsumoto N, Hashimoto H
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Journal Title
J Hum Genet
Volume: 61(3)
Pages: 199-206
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Glutamate Networks Implicate Cognitive Impairments in Schizophrenia: Genome-Wide Association Studies of 52 Cognitive Phenotypes2015
Author(s)
Ohi K, Hashimoto R, Ikeda M, Yamamori H, Yasuda Y, Fujimoto M, Umeda-Yano S, Fukunaga M, Fujino H, Watanabe Y, Iwase M, Kazui H, Iwata N, Weinberger DR, Takeda M
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Journal Title
Schizophr Bull
Volume: 41(4)
Pages: 909-918
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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