2016 Fiscal Year Research-status Report
卵巣がんのHeterogeneityと腹腔内免疫環境解析に基づいた腹膜播種の克服
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15K20138
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鈴木 史朗 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (20612758)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 卵巣がん / 腹膜播種 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 卵巣がん腹膜播種形成過程における腹腔内免疫環境とがん細胞の相互作用 2. 抗がん剤治療が腹膜播種免疫環境及びがんのHeterogeneityに及ぼす影響 上記2点の課題を解明すべくマウス卵巣がん細胞株の腹膜播種モデルを用いて研究をすすめた。 Heterogeneityを有するマウス卵巣がん腹膜播種モデルの構築のため、マウス卵巣がん細胞株ID8を基にsub-clone細胞株として高腹膜播種転移能を獲得したID8-T6、VEGF高発現株、抗がん剤(PTXおよびCDDP)耐性株を樹立した。sub-clone細胞株ごとの増殖能、遊走能といった細胞機能実験を行った。ID8親株とID8-T6のin vitro培養細胞およびin vivoで形成された腫瘍組織塊を検体としてそれぞれ回収し、DNA microarrayを施行した。培養細胞および腫瘍組織塊のいずれにおいてもID8-T6で高発現していた因子の中からIL-33に注目し、mRNAレベル・蛋白質レベルでの発現差のvaridasionを行った。さらに細胞株培養上清および腹水中の分泌蛋白質量にも同様な差を認めることをELISAにて確認した。そのため、IL-33強制発現株ID8-IL-33およびIL-33抑制株ID8-T6-shIL-33を新規に樹立した。樹立したIL-33強制発現・抑制系のいずれにおいてもIn vitroではコントロール株と比し増殖能に有意な影響を及ぼさなかった。 ID8親株、各種sub-clone細胞株(ID8-T6, ID8-VEGF, ID8-IL-33, ID8-T6-shIL-33)のMonoclonal modelにおいては、腹膜播種形成能の確認ができており、腹水や播種組織検体の回収を行った。Polyclonal modelとしては、まずID8親株とID8-T6の組み合わせから検討を開始している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マウス卵巣がん細胞株ID8の腹膜播種モデルだけでなく、卵巣がん患者でも高発現しうる液性因子もしくはレセプターを解析因子として優先しスクリーニングを行った。着目した因子の中から、細胞株でのvaridasionを行い、さらに卵巣がん患者検体での発現確認といった絞り込みを行う過程でやや時間を要し遅れが生じた。IL-33については他癌種ではがんに対して促進的・抑制的のいずれの報告もあり、その意義についてはcontraversialな状況である。卵巣がんでの報告や腹膜播種モデルでの報告はまだ限定的であり、IL-33強制発現株およびIL-33抑制株を樹立することとしたが、同sub-clone細胞株樹立にやや時間を要し遅れの一因となっている。 ID8-mock,ID8-IL33株をC57BL/6マウスに腹腔内投与したところ、生存では有意差を確認できなかったもののID8-IL33群の生存が延長する傾向を認めた。また、マウスsacrifice時の腹腔内の播種数および腫瘍重量に関しては有意にID8-IL33群で高くなっていた。IL-33導入が与える意義については、生存期間についてのバラつきがあったことから評価を深めるべく腹膜播種マウス数を追加して再度in vivo実験を行うこととしたために研究予定に停滞を生じている。ID8-T6-shIL-33とID8-T6-mock株の2群間での生存比較も並行して施行中である。 また、マウス卵巣がん細胞株HM-1においても同様にsub-clone細胞株の樹立を試みているが、並行して遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス卵巣がん細胞株ID8を用いた腹膜播種モデルの検討から選別した導入因子であるIL-33はIL-1ファミリーサイトカインの1つでありalarminとしても知られている。IL-33が卵巣がん腹膜播種モデルに対してがん促進的・抑制的のいずれであるのかはまだcontraversialな状況である。引き続き樹立したID8-IL-33およびID8-T6-shIL-33株を用いた腹膜播種モデルで研究をすすめる。 腹腔内微小環境の検討として腫瘍細胞における炎症・免疫関連因子の発現、腫瘍細胞以外の微小環境における免疫細胞(CD8:killer T細胞, CD4:Helper T細胞, Foxp3:Treg, CD11c:樹状細胞, F4/80:マクロファージ, CD11b:MDSCなど)の播種進行状態での差異について免疫組織染色およびFACSを行い比較検討する。併せて免疫細胞以外のがん間質構成(線維芽細胞や血管内皮細胞、細胞外基質など)についても病理組織学的に検討する。また、IL-33強制発現株の系において、腹水中の液性因子の差異を比較するためにLC/MSによる解析を行う。ID8-IL-33株で差のみられる蛋白質に関してvaridasionを行うとともにIL-33との関連性を検討する。 IL-33関連株については、蛍光蛋白質を同時に遺伝子導入する株も樹立する予定である。Monoclonal modelの解析後にはIL-33関連株と他のID8のsub-clone株とを腹腔内接種するDiclonal modelあるいは3株以上のpolyclonal modelでの研究を行う予定である。
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[Journal Article] PRIMA-1MET induces apoptosis through accumulation of intracellular reactive oxygen species irrespective of p53 status and chemo-sensitivity in epithelial ovarian cancer cells.2016
Author(s)
Yoshikawa N, Kajiyama H, Nakamura K, Utsumi F, Niimi K, Mitsui H, Sekiya R, Suzuki S, Shibata K, Callen D, Kikkawa F.
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Journal Title
Oncol Rep
Volume: 35(5)
Pages: 2543-52
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] 抗癌剤耐性ヒト卵巣癌細胞株における5-アミノレブリン酸を用いた光線力学療法の検討2016
Author(s)
勅使河原 利哉, 水野 美香, 石井 琢也, 三井 寛子, 内海 史, 関谷 龍一郎, 鈴木 史朗, 梶山 広明, 柴田 清住, 高橋 究, 石塚 昌宏, 吉川 史隆
Organizer
第58回日本婦人科腫瘍学会学術講演会
Place of Presentation
米子コンベンションセンター(鳥取県米子市)
Year and Date
2016-07-08 – 2016-07-10