2016 Fiscal Year Research-status Report
iPS細胞を用いた網膜色素上皮細胞のCMV抗原特異的な免疫応答と恒常性維持の解明
Project/Area Number |
15K20271
|
Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
小林 敬広 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (00708745)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | サイトメガロウイルス / 造血幹細胞 / iPS細胞 / 潜伏感染 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究は、臍帯血由来の造血幹細胞およびiPS細胞由来の造血幹細胞に対して、サイトメガロウイルスの臨床分離株の感染実験と潜伏感染への移行メカニズムの解析を行った。 その結果、サイトメガロウイルスが感染すると発現する前初期遺伝子(Immediate Early:IE)は経時的に発現が減少することを確認した。また潜伏感染に必須と報告されているUL138遺伝子については、経時的に発現を維持し続けることを確認した。これらの現象は両由来の造血幹細胞で確認できた。さらに、臍帯血由来の造血幹細胞において、感染細胞の一部がマクロファージに分化することも確認できた。続いて潜伏感染状態に移行した造血幹細胞に対して、再活性化に重要であると報告されているTNF-αや分化誘導因子であるGM-CSFを添加して培養したところ、IEとUL138遺伝子の発現が大幅に回復していることが確認できた。 以上の結果から、サイトメガロウイルスは造血幹細胞に感染し経時的に潜伏感染の状態に移行することが示唆される。そして、感染細胞の一部をマクロファージに分化させる。これは、炎症部位に潜伏感染した造血幹細胞やマクロファージが遊走し、TNF-αなどの炎症性サイトカインや分化誘導因子を受け取ることで、サイトメガロウイルスが再活性化し、回帰感染の状態に移行しやすい現象であることが示唆される。 さらに、この潜伏感染した造血幹細胞をNOGマウスに移植することで、潜伏感染した状態のヒト化モデルを作成することを計画している。これにより、生体内での再活性化や回帰感染の機序を明らかにできると考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
重度免疫不全マウスであるNOGマウスに対して、造血幹細胞を移植しヒト化させる計画を立てていたが、実験の結果、上手く生着せずにヒト化させることが出来なかった。そのため、引き続き生着を試みている状況であるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き網膜色素上皮細胞による恒常性維持のメカニズムの解明を行っていくと同時に、潜伏感染した造血幹細胞をNOGマウスに生着させて生体内での再活性化メカニズムの解明を行っていく。さらに、網膜色素上皮細胞による免疫寛容の仕組みを利用して、生体内での再活性化および回帰感染の機序についても明らかにしていきたい。
|
Causes of Carryover |
当初予算計上していた抗体や遺伝子導入試薬、ELISA kitやディスポーザブルのプラスチック器具などが他の競争的研究資金によって賄われたため購入を見送ったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
感染細胞の経時的な遺伝子発現の解析のためにDNAマイクロアレイ解析の外注、マウスの購入や飼育管理およびウイルス感染・細胞移植・網膜色素上皮細胞の移植といった研究に使用予定である。
|
Research Products
(3 results)