2015 Fiscal Year Research-status Report
重症病態における腸管上皮幹細胞機能異常の解明とその維持に関わる治療の開発
Project/Area Number |
15K20340
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山田 知輝 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任研究員 (40623434)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 腸管上皮幹細胞 / 全身性炎症反応症候群 / BrdU / Wnt |
Outline of Annual Research Achievements |
敗血症、重症外傷などの重症病態で、腸管機能不全の併発が予後を左右する一因であることが近年注目されているが、全身侵襲時における腸管機能不全発症のメカニズムは未だ十分に解明されていない。我々は重症病態において腸管上皮幹細胞(intestinal stem cell)の機能が低下することにより腸管上皮の再生が阻害され、腸管蠕動不全やバリア機能不全を来しているという仮説を立てた。盲腸結紮穿刺(CLP)モデルを使用し、全身侵襲時の腸管上皮幹細胞の動態を解析し、腸管上皮幹細胞の機能変化を明らかにすることを目標とした。 現在までのところ、①CLPモデルに細胞の分裂・増加を反映するBrdUを投与し陰窩中の細胞分裂している細胞数につき検討した結果、減少傾向が見られた。②介入後10時間後の評価であるが、腸管上皮幹細胞の増殖・分化の亢進シグナルであるWnt3、Wnt3aはCLP群で有意に低下しており、Wntに抑制的に働くBMP4、BMP2には差を認めず、BMPの阻害タンパクであるNogginはCLP群で有意に低下していた。また、腸管上皮幹細胞マーカーのLgr5、パネート細胞のlysozymeがCLP群で有意に低下していた。③腸管上皮幹細胞に特異的にEGFPが発現するLgr5-CreERマウスにCLP侵襲を加えると明らかにLgr5陽性細胞数が減少していた。 ということまで示せている。 これらのことより、CLP侵襲にて腸管上皮幹細胞障害が起こることにより、絨毛萎縮や腸管蠕動不全が生じ、栄養障害や腸管免疫能の低下などにつながっている可能性が考えられた。 今後は各種シグナルを、3時間後、24時間後の2ポイントで確認するなど、検討を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究環境に変化があったこともあり、若干進行が遅れ気味ではあるが、当初の予定通りの実験・解析を行う予定としている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究協力も得られる体制を構築しており、実験を進めていく。
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Causes of Carryover |
一部で当初計画していた実験と実際の進捗の状況に差異が生じたため、今年度、必要となると予想していた経費の一部を今後の段階で使用することが必要となったから。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
概ね当初の研究計画の方向に沿って今後の研究を進めるが、今年度までの結果をふまえて細かい点で作業の進め方に関して変更を加えた形で実験を行っていく。
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