2015 Fiscal Year Research-status Report
機能獲得型変異TP53による口腔がんの悪性化進展の機序解析
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15K20498
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中澤 誠多朗 北海道大学, 大学病院, 医員 (40736998)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 口腔癌 / p53 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまで変異型p53が口腔癌を含めたヒト癌に及ぼす影響について研究を重ねてきた。その結果、優性阻害性(dominant negative: DN)変異のp53をもつ口腔扁平上皮癌で再発率が高いことを見出した。これらの現象はDN変異p53が野生型p53(wtp53)の機能を喪失させるだけでなく、新たな機能を獲得すること(gain-of-function: GOF)を示唆している。さらに我々は、口腔扁平上皮癌で見られるDN変異p53のうち特定の変異が細胞運動能・浸潤能・接着能を増強させる結果を得た。本年の研究では、細胞運動能・浸潤能・接着能以外の性状でがんの悪性化に関連するもの、すなわち抗がん剤ならびに放射線に対する感受性に及ぼすp53-R248Qおよびp53-R248Wの役割を明らかにするために、p53-nullと同等のOSCC細胞株であるSASにp53-R248Q(SAS-R248Q)、p53-R248W(SAS-R248W)あるいは空ベクター(mock)を導入・発現させた細胞間で、in vitroにおける抗がん剤(5-FUおよびシスプラチン)および放射線の感受性について比較検討を行った。また、p53-R248Qおよびp53-R248Wの転移能との関わりを明らかにするために、SAS-R248Q、SAS-R248Wおよびmock細胞をSCIDマウスに移植し、転移能を比較検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究実施計画で策定した当初の実験計画を概ね達成できている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究実施計画に沿って研究を推進する。 平成28年度の予定としては、p53-R248QがOSCC細胞の接着・運動・浸潤能を増強させる分子メカニズムを明らかにするために、p53-R248Qが転写因子としての新たな標的遺伝子の転写を活性化させているのか否かの検討を行う。 SAS-R248Q、SAS-R248W細胞を1%ホルムアルデヒドで処理(蛋白とDNAの架橋反応)し、細胞核を分離する。核画分に蛋白抽出溶液を加え、超音波処理、遠心して上清を回収する。上清に抗p53抗体,引き続きプロテインAセファロースを加えて,免疫沈降する(免疫沈降物にはp53タンパク質と架橋したDNA断片が含まれている)。得られた2重鎖DNAをプローブとしてタイリングアレイ解析を行う(当教室にはアレイ解析設備がないので外注する)。SAS-R248Qで検出され、SAS-R248Wで検出されなかった遺伝子が接着・運動・浸潤能の増強に関与している遺伝子の候補となる。つぎに、p53-R248Qが候補遺伝子を転写活性化することを、当該遺伝子のプロモーター領域をルシフェラーゼの上流に連結したレポーターベクターを作製し、レポーターアッセイにて確認する。さらにSAS細胞に当該遺伝子を強制発現させ、接着・運動・浸潤能の増強効果があることを調べる。
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Causes of Carryover |
過去の研究で使用した消耗品に余剰があり、当初見込んだ物品費を下回った
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在英語論文を執筆中であり、その掲載費等として使用する
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