2016 Fiscal Year Research-status Report
主観的重量感覚の操作が人の把持運動に与える影響の解明と運動機能に及ぼす効果検証
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15K20827
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
李 美龍 北海道大学, 工学研究院, 助教 (50581758)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 重量感覚 / 把持運動 / Haptic Illusion |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は,個人が持つ重量感覚が等しい条件下でも物体の持ち方,腕の動き,力の方向等,物体把持時の物理的運動によって異なるという仮説の元,「主観的重量感覚の操作が人の把持運動に与える影響の解明と運動機能に及ぼす効果検証」を研究目的とした.この目的を達成するため,2年間にかけて2つの研究課題を計画し,3つの実験を通して遂行していく予定であった. 平成27年度には,課題1として「重量感覚の心理スケールの作成と主観的重量感覚が把持移動運動に与える影響の解明」を実施した.実験①では基本図形である円柱と立方体を対象とし,断面の角にフィレット加工と面取り加工を加えることで主観的重量感覚の変化を確認し,重量感覚の心理スケールを作成した.この研究成果については日本感性工学会で報告し,平成28年度には更なるデータ分析と考察を経て,現在は日本感性工学会論文誌に査読論文として投稿する予定である. 一方,実験実施の際に実際の製品への適用を考慮した追加検証実験の必要が指摘された.従って,モバイル機器として携帯したり操作する頻度が高い薄型直方体形状を用いた検証実験を実施した.ここで得た研究成果は,2017韓国基礎造形学会春季国際学術大会(ソウル,韓国)にて2017年5月に報告する予定である. しかし,研究代表者が平成27年度の下半期より約8ヶ月間の海外研修を行い,さらに主な研究協力者の一人が東京に移動したことで,研究環境が大きく変わった.そのため,本課題の既存計画を大きく修正しなければならなかった.実際に平成28年度には前述したように実験①の追加実験と平成27年度予定していた実験②を遂行し,課題1を完了した.この研究成果については2017年9月までに関連分野の国際ジャーナルDesign Studiesに投稿する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者は本研究課題を達成するため,平成27年度から平成28年度の2年間にかけて2つの研究課題を計画し,3つの実験を通して遂行していく予定であった.具体的には研究1年目の平成27年度に課題1「重量感覚の心理スケールの作成と主観的重量感覚が把持移動運動に与える影響の解明」の遂行のために2つの実験を予定していた.また,2年目の平成28年度には「感覚運動機能検査装置の制作と主観的重量感覚の操作が感覚運動機能に及ぼす効果の検証」の遂行のために1つの検証実験を予定していた. 平成27年度の上半期には研究計画に従って実験①を着実に実施し,研究成果をあげた.しかし,実験②を準備して本格的に実験を開始しようとした下半期に約8ヶ月間の長期海外研修が決まった.さらに主な研究協力者の一人が東京に移動することとなったため,研究環境が大きく変わるようになった. この状況の中で,海外研修では主に本研究課題と関連した内容の実験を計画して海外研究者らの協力を得て課題を継続して遂行してきた.しかし,帰国後にデータを分析して考察をすると実験結果の中に矛盾があることが分かった.また,従来の実験結果とも大きい違いが現れたため,研究をもう一度見直す必要がある.これは国内では実験材料をプラスチック素材のひとつであるABS樹脂を使用したが,海外では新しい関連文献を参考に金属素材のブラス(Brass)に変えたことが原因ではないかと考えられる.その上にモデル材料が変わったことで,モデルの大きさも小さく変更したためであると予想する. 従って,研究代表者は上記にあげた研究環境の変化と,海外研修での研究が予定通りに進まなかったことから,課題を計画通りに遂行することは困難な状況であると評価した.そして,本研究課題の本来の目的を充実に達成することを目指して,総合的な判断により研究期間を1年間延長することとした.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の推進状況は本来の実施計画より,やや遅れていると言えるが,これは研究代表者の海外研修により研究環境が大きく変わったことが主な原因としてあげられる.また,研究計画に従って実施した実験で新しい応用の可能性を見出したため,追加検証実験を実施したことも原因のひとつである. しかし,追加実験を行ったことで研究内容がより明確となり,研究成果の活用の可能性もさらに広がったと考えられる.また,2年間の研究期間を1年間延長して3年間に変更したことで,本年度には平成28年度に予定していた課題2を計画に基づいて着実に遂行する時間を確保した. 従って,最終年度となる平成29年度には,課題1「重量感覚の心理スケールの作成と主観的重量感覚が把持移動運動に与える影響の解明」において,もう一度研究結果を見直し,意味のある内容をまとめて査読付き論文として仕上げて完成させる. また,課題2「感覚運動機能検査装置の制作と主観的重量感覚の操作が感覚運動機能に及ぼす効果の検証」においては,感覚運動機能検査装置の制作と感覚運動機能に及ぼす効果検証実験の二つに分けて進めていく.感覚運動機能検査装置は,すでに研究協力者である工学系技術センターの技術職員の助言を得て,全体フレーム制作を始めており,実験の実施環境も整っていたため,順調に進んでいる. 一方,効果検証実験では被験者の年齢構成が研究の成果に大きく影響するため,専門家の助言を得るとともに,研究補助者と被験者の確保および容易な実験方法について議論している. 従って,平成29年度の上半期に感覚運動機能検査装置を完成し,その後は速やかに効果検証実験を実施して課題2を充実に遂行し,研究期間中に検証実験における査読付き論文の作成まで完了する.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が「1,094,987円」となった大きい理由は,平成27年度から平成28年度の2年間にかけて行う予定であった研究課題を1年間延長して3年間に行うこととしたためである.すなわち,研究2年目の平成28年度に行う課題2「「感覚運動機能検査装置の制作と主観的重量感覚の操作が感覚運動機能に及ぼす効果の検証」を3年目の本年度に実施する予定である.それに伴い,感覚運動機能検査装置(アルミフレーム,加速度センサー,CCDカメラ,装置制作用消耗品等)を制作するための費用として822,000円を計上していた予算がまだ未使用である.さらに課題2の検証実験のための人件費や謝金等を180,000円計上していたが,まだ未使用の状況である.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の次年度使用額が生じた理由で示したように,主に課題2「「感覚運動機能検査装置の制作と主観的重量感覚の操作が感覚運動機能に及ぼす効果の検証」のための装置制作費用と被験者への謝金,研究補助者への人件費として使用する予定である.
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Research Products
(2 results)