2015 Fiscal Year Research-status Report
動脈硬化リスク因子としてのヘリコバクター・シネディ感染病態のコホート研究
Project/Area Number |
15K20857
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松永 哲郎 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00723206)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Helicobacter cinaedi / nested PCR / 保菌スクリーニング / 感染疫学 / 一般健常者 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヘリコバクター・シネディ(Helicobacter cinaedi)は腸肝ヘリコバクター属に属し、1984年に初めてヒトへの感染が確認された新興感染症菌である。近年、本菌感染症の発症例および再発例が多く報告されているが、病態発現機構や感染疫学など不明な点が多く残されている。現在までに当研究室では、本菌感染症のELISAによる血清診断法および迅速かつ高感度なnested PCR検出法を開発した。これらの方法を用いて最近、本菌感染が動脈硬化症の進展に関与する可能性を見出した。本研究では一般健常者の試料を用いてH. cinaedi感染の病態と疫学特性の解明に向けた研究を推進している。 当該年度では、一般健常者からのnested PCR法による保菌スクリーニング解析を行った。まず、一般住民を対象とした千人規模の生体試料の解析を行う前に、健常ボランティア274名を対象とした保菌スクリーニング解析を行った。その結果、健常ボランティアの274検体から複数の陽性例(9検体)を認めた。さらに、この9例について便培養を行ったところ、5例でコロニーの増殖が見られ、本PCR法により同遺伝子の増幅が認められた。 今回開発したH. cinaedi特異的nested PCR法の解析により、本菌は健常人の腸管に定着している可能性が示唆された。本PCR法は、迅速かつ特異的な検出法として、H. cinaedi感染の早期診断や治療効果判定および疫学調査において有用なツールとなるものと期待される。今後、ELISAを用いた感染スクリーニング、多変量解析を用いた心血管疾患との関与など研究計画に沿って解析を行い、H. cinaedi感染疫学および病原性発現機構を明らかにし、本感染症の予防や治療に向けた研究を推進する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では一般健常者の試料を用いてH. cinaedi感染の病態と疫学特性の解明に向けた研究を展開している。当該年度では研究実施計画に沿って、一般健常者からのnested PCR法による保菌スクリーニング解析を行った。まず、一般住民を対象とした千人規模の生体試料の解析を行う前に、健常ボランティア274名を対象とした保菌スクリーニング解析を行った。解析の結果、健常ボランティアの274検体から複数の陽性例(9検体)を認めた。さらに、この9例について便培養を行ったところ、5例でコロニーの増殖が見られ、本PCR法により同遺伝子の増幅が認められた。これらの結果から、H. cinaediが健常人の腸管に定着している可能性が示唆された。現在、一般住民を対象とした千人規模の生体試料についてのnested PCRによる保菌スクリーニング解析およびELISAによる感染スクリーニング解析を推進している。
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Strategy for Future Research Activity |
新興感染症菌H. cinaediの感染疫学を明らかにするために、現在、数多くの一般健常者に関する生体試料が保存されている岩木健康推進プロジェクトの保存試料から、特異的かつ高感度なnested PCR法を用いて保菌スクリーニング解析およびELISAによる血清診断法を用いて本菌の感染の有無について解析している。保菌・感染スクリーニング解析の後に、研究実施計画に沿って、保菌および感染の有無についてプロジェクト健診で得られている臨床的パラメータと多変量解析を行い、動脈硬化症および心房性不整脈を中心にH. cinaedi感染との関与について明らかにする。具体的には、スクリーニング解析による保菌の有無および抗体価について、各種臨床的パラメータとの多変量解析を行い、一般健常者におけるH. cinaedi保菌・感染と動脈硬化症病態との関与について明らかにする。さらに、保菌者の便検体から上述の培養法を用いて、効率的に一般健常者からの菌株取得を行う。培養によって得られた菌株は、研究協力者である愛知学院大学の河村好章教授のもとで系統樹解析を行い、菌株のクラスター分類・分布について明らかにし本菌感染の疫学特性の解明を行う。これらの解析により、H. cinaedi感染疫学および病原性発現機構を明らかにし、本感染症の予防や治療に向けた研究を推進する。
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Causes of Carryover |
当該年度では、実験に使用する試薬、消耗品などの物品費が当初の予定よりも少ない額で、H. cinaedi感染の疫学特性の解明に向けた研究を展開することができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
一般住民を対象とした千人規模の生体試料についてのnested PCRおよびELISAを用いた保菌・感染スクリーニング解析の為の実験に関する試薬や消耗品などの物品費に使用する。また、研究成果を論文にまとめ投稿する為の英文校正や論文投稿費として使用する。
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Remarks |
東北大学大学院医学系研究科環境保健医学分野ホームポージ http://www.toxicosci.med.tohoku.ac.jp/index.html
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[Presentation] Formation and signaling functions of a new signaling molecule 8-nitro-cGMP in bacteria2016
Author(s)
Tetsuro Matsunaga, Tomoaki Ida, Soichro Akashi, Minkyung Jung, Hiroyasu Tsutsuki, Hideshi Ihara, Tomohiro Sawa, and Shigemoto Fujii, Takaaki Akaike
Organizer
The 9th International Conference on the Biology, Chemistry, and Therapeutic Applications of Nitric Oxide
Place of Presentation
仙台国際センター(仙台市青葉区)
Year and Date
2016-05-20 – 2016-05-23
Int'l Joint Research
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