2015 Fiscal Year Research-status Report
強風災害に対する日本住宅のリスク評価と耐風性能向上度の可視化
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15K20861
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
ガヴァンスキ 江梨 京都大学, 防災研究所, 研究員 (00608797)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 住宅 / 風荷重 / 部材耐力 / 風洞実験 / 信頼性解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は強風災害において日本の住宅が被る強風被害総額と風速の関係を示す脆弱性モデルを構築することであり、①強風・飛来物による開口部の破損②開口部破損による内圧上昇に伴う、屋根に作用する上向き風力の増加③屋根・壁接合部の破壊、という被害のシナリオを想定している。脆弱性モデル構築のための信頼性解析では破壊を想定する部材の耐力統計情報と部材に作用する風荷重統計情報が必要であり、本年度はこれらの統計情報の実験による収集を主に行った。 破壊シナリオ③の屋根・壁接合部の耐力算定実験を行った。具体的には垂木と軒桁、金具から成る接合部を再現した試験体が破壊するまで、単調引張荷重を載荷した。使用した垂木・軒桁・金具は一般的な住宅建設で用いられるものを想定し、寸法や材種、金物種類を選定した。また既往の研究より耐力に影響を及ぼすパラメータとして1.住宅の屋根勾配、2.載荷速度、3.位置決め釘の有無、4.垂木の支持間隔、5.軒桁の材種、を検討し、全7試験パターン、各試験パターン20体の試験体を用いて実験を行った。結果として今回検討したパラメータにおいては屋根勾配と位置決め釘が耐力に影響を及ぼす結果となり、それぞれに対して統計情報を取得した。 また上述の実験は新品の木材・金具を用いて行ったが、これに加えて取り壊し予定の住宅(築23年)から屋根壁接合部を取り出す機会を得ることができたため、試験体25体を取り出した。これにより経年劣化による耐力低減効果の把握が可能となる。 住宅に作用する風荷重情報を風洞実験により取得した。想定した破壊シナリオ②のため、開口部が瞬間的に解放された場合の建物内外圧の同時測定を行った。結果、建物に作用する内圧は風向により変化することが分かり、従来のように風向にかかわらず一定の内圧係数を用いることでは正しく評価できないことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度における実施計画では①部材耐力実験を行うための基礎資料収集、②飛来物による窓ガラス破壊モデル作成のための耐力値の資料収集、そして③部材耐力測定実験であった。このうち①と③は終了し、平成28年度に予定していた風洞実験の一つも終了したため、おおむね順調に進展していると判断した。 ①に関しては既往文献の調査に加えてハウスメーカー、関連研究施設への聞き取りも行い、最も一般的な材料、留め具金具、工法を選定した。③の屋根壁接合部の耐力測定実験は「研究実績の概要」で説明したように終了した。この実験では新品の部材を用いての実験を行っているが、経年劣化した部材を用いた接合部の耐力は低下していると考えられる。今回、取り壊し予定の建物から部材を取り出す機会を得ることができたため、追加でこの耐力実験も行う予定でおり、現在実験準備を行っている。これによりあまりデータのない経年劣化の影響に関しても評価できるものと考える。 最後に風荷重情報取得のための住宅に作用する風圧の測定であるが、軒屋根に対する風洞実験は終了し、次に行う切妻屋根の風洞実験準備に現在取り掛かっている。 ②の既往文献調査に関しては今年度行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
住宅に作用する風荷重の算定としては陸屋根に加えて切妻屋根を想定した風洞実験を現在計画しており、これで信頼性解析を行う上で必要となる風荷重情報の取得が完了する。これらの情報を用いて建物外圧・内圧の相関に関するより詳細な解析を行う予定である。 築23年の建物から取り出した屋根・壁接合部の耐力測定実験を実施し、統計情報を得る。また新品の試験体を用いた場合の耐力値の比較を行い、経年劣化による耐力低減具合に対しても考察する。そしてこれらの情報も加えて信頼性解析を行う。 その他、信頼性解析を行うために必要となる情報として、飛来物による窓ガラス破壊モデル作成のための耐力情報を既往文献調査より取得する。また今回破壊を想定した建物の復旧コスト試算のために各外装材の一般的な材工費単価の情報を収集する。 最後に上記で得た情報を基に被害の連鎖を考慮した信頼性解析をモンテカルロシミュレーションにより行う。
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Research Products
(2 results)