2015 Fiscal Year Research-status Report
乳癌浸潤PD-1発現T細胞の特徴に基づくPD-1標的療法の効果予測
Project/Area Number |
15K21087
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 志緒 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (30721378)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | PD-1 / human / CXCL13 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は関節リウマチに局所に存在するCXCL13産生CD4陽性T細胞がCXCL13のレセプターであるCXCR5を発現する末梢循環リンパ球をリクルートする事で炎症の持続に関与している事を示唆する報告を以前行ったが、このようなCXCL13産生CD4陽性T細胞は乳癌組織内にも存在し、特にHER2陽性の乳癌において腫瘍内CXCL13発現の割合と乳癌患者の予後が正の相関を示す事が報告されている。これまでに得られた知見より、乳癌組織内に存在するCXCL13産生CD4陽性T細胞は癌組織内へのリンパ球浸潤を促し、抗腫瘍効果を高める役割を持つのではないかと考えられる。しかし、この細胞が現在様々な癌において効果を示す新規癌治療法のターゲットであるPD-1を強く発現している事より、このような細胞を多く含む乳癌患者でPD-1標的療法がどのような影響を与えるかは現在のところ不明である。そこで、今回の採択課題では、癌組織に浸潤したPD-1陽性CXCL13産生CD4陽性T細胞へのPD-1標的治療の影響を知るために、我々が独自に見出したCXCL13産生CD4陽性T細胞のin vitro誘導技術を用いて、CXCL13産生T細胞におけるPD-1分子の役割を解析する。同時に、研究協力者より得られる新鮮乳癌組織の解析を行いCXCL13産生CD4陽性T細胞と病態との関連を考察する。また患者病理標本を用い、乳癌組織内に存在するCXCL13産生細胞の同定を行うための免疫組織染色を行う。これらの免疫組織染色による解析では、CXCL13産生CD4陽性T細胞の存在と患者の臨床データを紐づけする事が出来る他、多重免疫染色を行う事でCXCL13産生細胞とCXCR5発現細胞の位置関係を知る事が可能であり、CXCL13産生CD4陽性T細胞と癌組織内リンパ球浸潤の程度を推察し、乳癌におけるCXCL13産生CD4陽性T細胞の乳癌組織内での役割について更なる考察を深める事が可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに研究協力者より4検体の新鮮乳癌組織、病理標本を提供して頂き、それらの免疫染色による解析を実施した。 新鮮乳癌組織の解析では、以前の報告と同様に、CXCL13産生CD4陽性T細胞の存在が確認され、これらの細胞がPD-1抗原を強く発現する事が判明した。検体の中にはIFN-gを産生するCXCL13産生CD4陽性T細胞も存在し、これらの細胞がCXCR5陽性細胞をリクルートするのみならず、サイトカインを産生する事で抗腫瘍効果を示している事も示唆された。CXCL13産生CD4陽性T細胞存在割合は患者によりばらつきがあるため、患者の臨床症状との関連性について検討を継続中である。病理標本を用いた解析では、CXCL13の産生細胞としてT細胞の他に癌細胞、内皮系細胞がCXCL13を産生している事が確認された。興味深い事にCXCL13産生T細胞が多く存在する組織ほど、癌組織内へのリンパ球浸潤の程度が高いことが確認された。この事はCXCL13産生T細胞の存在が癌浸潤リンパ球と相関することを示唆している。 誘導したCXCL13産生CD4陽性T細胞を用いたin vitroにおける解析では、これらの細胞でのPD-1分子の過剰発現もしくはノックダウンによるCXCL13産生への影響について検討を試みた。レンチウイルスシステムを用いてPD-1分子を過剰発現したCXCL13産生 CD4陽性T細胞を誘導したところ、コントロールに比べCXCL13産生に変化は認められず、PD-1分子の過剰な発現はCXCL13産生に影響を示さない事が示唆された。逆にPD-1分子をノックダウンする事でのCXCL13産生への影響については、現在のところsiRNAペプチド、shRNAのベクタ-を作成し、その効果について検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
患者検体を用いた解析では、研究協力者より引き続き新鮮癌組織検体と病理組織検体を入手し、CXCL13産生CD4陽性T細胞と患者病態との関連、CXCL13産生T細胞の機能を推察するための他の発現分子の解析、CXCL13産生細胞中のT細胞の存在の割合とリンパ球浸潤の程度の関連、CXCR5発現細胞の集積の程度、などについて検討を進める。 In vitroでの誘導CXCL13産生CD4陽性T細胞を用いた解析では、ノックダウン法を用いてPD-1発現の有無がCXCL13産生にどう影響するかを調べ、さらに抗PD-1抗体を用いる事でPD-1標的治療法がCXCL13産生CD4陽性T細胞へどのように影響するかについて検討を進めていく予定である。PD-1標的治療法の検討を行う為に乳癌腫瘍細胞も入手済みであり、今後誘導CXCL13産生CD4陽性T細胞とPDL-1発現癌細胞との共培養系も立ち上げる予定としている。
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Causes of Carryover |
昨年度までの解析では、本採択課題開始以前より所有していた実験物品を使用し研究を進めていた為、当初の予定よりも物品にかかる経費が少額であった事と、当初予定していた情報取集の為の学会参加が研究実施の為に実施出来なかった事により、研究計画書に記載の金額よりも使用金額が少額となり、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度はこれらの余剰経費を抗体購入に充て、今年度に不十分であったCXCL13産生CD4陽性T細胞の他の特異分子発現の探索に充填する予定としている。
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