2016 Fiscal Year Research-status Report
Monitoring of the hemoglobin oxygen saturation via the ultra-high sensitive NMR signals
Project/Area Number |
15K21218
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
高草木 洋一 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 分子イメージング診断治療研究部, 主任研究員(任常) (60439916)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 超偏極 / NMR / MRI / CEST / 造影剤 / ヘモグロビン / 酸素飽和度 |
Outline of Annual Research Achievements |
酸素は、肺において血中の赤血球ヘモグロビンと結合し、血液循環によって末端組織へと運ばれる。生体内の生理学的条件や代謝、組織内酸素濃度 [pO2 (mmHg)] 等に反応して放出・供給され、その指標であるヘモグロビン酸素飽和度 [sO2 (%)] が変動する [sO2 (%) = Hb-O2 / (Hb-O2 + Hb)・100] (Hb-O2: オキシヘモグロビン, Hb: デオキシヘモグロビン)。一方、ある種の疾患発症時においては、その組織や部位特異的な sO2 の制御不良が生じている。特に、腎や脳などの生体深部における sO2 の異常は、それらの臓器疾患と密接に関連しており、末端手指より sO2 を観測可能なパルスオキシメーターのみでは、生体内部の状態を直接調べることは困難である。したがって、MRI のような技術を基盤として酸素飽和度の新たな計測法を確立されれば、生体深部における位置情報も踏まえた sO2 の「その場測定」が可能となり、次世代 MRI 診断治療における新たな要素技術となりうる。 本研究では、近年注目されつつある超偏極核磁気共鳴法 (Hyperpolarized NMR) や化学交換飽和法 (Chemical Exchange Saturation Transfer) により、ヘモグロビン酸素飽和度を観測するための造影剤の創出および応用計測を目的とする。本年度は、前年度に選出された酸素動態可視化用の低分子造影剤について、以下の検討を実施した。 1.超偏極 MR プローブとしての応用を指向した各種物性評価 2. 化学飽和交換法 (CEST) における基礎データの取得およびマウス個体からの CEST シグナル観測 3. 造影剤のマウス投与前後における sO2 の変動追跡 (パルスオキシメーター)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、開発の中心としていた超偏極 MR プローブとしての応用は、使用装置の問題から研究が遅延していたが、本年度より並行して進めている化学飽和交換法 (CEST) への応用研究は予想以上に進展している。 1.超偏極 MR プローブとしての応用を指向した各種物性評価: 400 MHz NMR (JEOL) を用い、緩衝液中に溶かした本化合物の分子構造内に存在するカルボニル炭素の T1 を、inversion recovery 法によって計測した。その結果、T1 は 20 秒を超えることが判明し、超偏極プローブとして生体内計測へ応用可能な偏極寿命を持つことが判明した。 2.化学飽和交換法 (CEST) における基礎データの取得およびマウス個体からの CEST シグナル観測: 7 T MRI (Bruker) を用い、各種溶媒条件下における造影剤の CEST シグナルの検出を試みた。飽和パルスによって飽和させた造影剤内の交換可能な H と、溶媒水の H の交換を、Z-spectra 上で観測し、緩衝液あるいはラット血液中に存在する造影剤のCEST 現象を、その化学シフト値 (ppm) や、濃度・pH 依存的なシグナル強度の変化として捉えることに成功した。 3.造影剤のマウス投与前後における sO2 の変動追跡: パルスオキシメーターを用い、マウス尾静脈への造影剤投与後に生じる sO2 の変動追跡を予試験した。マウスを麻酔下で固定し、右後足に検出器を装着後、カニュレーターを通して造影剤を投与した。その結果、投与数秒後に sO2 の減少が見られ (約 9 % 減少)、15-30 秒の後に元のレベルまで回復した。造影剤の投与によりヘモグロビンからの酸素放出が促進され、デオキシヘモグロビンが一時的に増加したことが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、該当造影剤の応用性について検討を進める。 これまで収集した基礎データをもとに、マウス個体からのシグナル検出を目標に諸条件を決定する。検出には正常マウスに加え、疾患診断への応用を指向して担癌モデルマウスなどを使用し、局所の sO2 計測の可能性と、疾患の悪性度診断等への応用可能性を示す。
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Causes of Carryover |
当初計画していた超偏極研究の装置が使用困難となり、実験が停滞した期間が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初計画していた超偏極 NMR に加えて、化学飽和交換法 (CEST) を並行して実施しており、良い成果を得ている。そのため、CEST 研究を中心テーマとして実験を継続し、必要な試薬類、消耗品の購入に使用する予定である。
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