2015 Fiscal Year Research-status Report
医療専門職者における専門職連携能力の熟達と経験学習に関する研究
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15K21256
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
高橋 平徳 愛媛大学, 教育・学生支援機構, 講師 (90612200)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | IPW / 専門職連携実践 / IPE / 専門職連携教育 / 経験学習 / 仕事現場での学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究「医療専門職者における専門職連携能力の熟達と経験学習に関する研究」は,医療専門職者が,専門職連携能力をどのように業務での経験によって学習し,熟達させていくのかについて,定性・定量の両面から研究を行う。そうすることで,医療現場での専門職連携能力開発に向けた環境形成やマネジメント,研修内容・評価,専門職連携教育の改善に貢献する知見を獲得することを目的とする。 平成27年度は文献検討を軸に研究をおこなった。医療専門職も含んだ専門職が業務を行う仕事現場における学習を検討する上での理論的枠組みを整理するため,経験学習研究,状況的学習研究,水平的学習研究,熟達研究,能力研究のレビューを行った。その結果,経験学習のプロセスを検討する上でのモデルや,獲得されている能力の内実,現場での学習を分析する上で検討すべき課題が抽出され有益な示唆が得られた。一方で,水平的学習研究の視点に立った学習のリソースとしての経験や学習成果の内実の研究がほとんど空白であることや,連携の類型や内実は明確化されていないこと,また,現場での学習プロセス全体を包括するモデルも未構築であり,現場で行われている連携による経験と能力獲得の関係はほとんど検討されていないといったように,仕事現場における学習については,断片的な解明しかなされていないことが明らかとなった。この研究は,論文(2015)「現場における学習研究の現状と課題」(北海道大学大学院経済学研究科『経済学研究』, 65(2).)として結実している。また,教育現場での専門職連携教育の成果と改善に関して,共同で学会報告「初年次の多職種連携地域基盤型医療実習の効果」(第47回医学教育学会, 2015年7月.)を行った。全下位尺度において有意に実習後得点が増加し,とくに地域医療の理解(r=0.73),地域生活の理解(r=0.75)に有効であること示す結果を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では,平成27年度後半よりインタビュー調査やシャドーイングを実施する予定であったが,年度後期に研究者の所属研究機関の変更があったため,インタビュー調査一件の実施のみで,計画通りとは言えない部分がある。しかし,研究の核である仕事現場における学習研究の現状と課題を示す論文を,研究開始一年目で発表できたことは,研究の大きな進捗であると言える。そのため,「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究において大きな割合をもつのはインタビュー調査と質問紙調査であり,研究が計画通りに進むかどうかは、調査対象としての協力を得られるかにかかっている。北海道から愛媛県という遠隔な所属研究機関の異動があり,医療教育から教員養成へと専門分野も大きく変更されたため,研究対象の選定と協力依頼が容易ではなくなったが,これまでの研究や教育活動において関係を構築してきた施設や協力者への研究者からの直接依頼,あるいは共同研究を行ってきた研究者に協力を得ての間接依頼,さらには近隣の医療機関への新規協力依頼などによって,研究対象を新たに選定し研究を完遂する事を目指す。
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Causes of Carryover |
平成27年度は,研究成果の学会報告や研究助言を受けるための旅費,文献等購入のための物品費で研究費を使用したが,具体的調査とその分析にかかる経費(複数の調査対象期間での観察・インタビュー等での旅費,インタビュー協力謝品購入のための物品費,インタビュー文字化のための人件費・謝金)に研究費を大きく使用しなかったため,次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は,主に具体的調査とその分析や,学会参加・報告に対して研究費を使用する予定である。
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