2016 Fiscal Year Research-status Report
肝臓移植における抗体関連性拒絶反応抵抗性のメカニズムの解明
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15K21365
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山田 洋平 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (60383816)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 抗体関連性拒絶反応 / 抗ドナー抗体 / 肝細胞周囲線維化 / 肝移植 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝臓移植のグラフト不全の一因として抗ドナー抗体関連拒絶反応が発生することは知られている。一方で、肝臓移植における抗体関連性拒絶反応は、他の臓器移植と比較して、抗体が存在していても拒絶反応が発生しないこともあり、そのメカニズムが明らかになっていない。また、長期の肝グラフトは、採血データには現れない肝細胞周囲線維化が観察されるため、抗ドナー抗体の存在がその一因であることが幾つかの研究から示唆されている。 まず、小児肝移植患者の長期生着患者の抗ドナー抗体を測定し、組織学的評価との関連を解析を行った。長期生存患者の肝組織は、採血データにおける肝機能が正常であっても、肝細胞索に沿った線維化を認めることが知られているが、その線維化の程度と抗ドナー抗体との間には相関が示唆されており、小児生体部分肝移植後3年以上経過し、ドナーの協力とprotocol肝生検の結果が得られた患者を対象として横断研究を行った。抗HLA抗体をドナーリンパ球に対する反応性の有無をフローサイトメトリークロスマッチ(FCXM)によって評価して抗HLAーDSAの有無を決定した。抗HLAクラスII DSA陽性患者では中等度以上の肝細胞周囲性線維化が有意に多く認められた。 さらに、臨床では急性抗体関連性拒絶反応を発症した患者血清を詳細に解析し、急性期に抗体が拒絶を起こす現象を詳細に解析することに成功した。 動物モデルにおいては、BALB/cマウスを用いて、肝臓類洞内皮細胞及びコントロールの肺毛細血管内皮細胞におけるMHC-I抗体との反応による遺伝子の変化をマイクロアレイを用いて評価した。幾つかの関連遺伝子の変化(Protocadherin 10やTrpm2)が観察され、その変化遺伝子の臨床的意義について解析を行っている。vivoではマウスに直接自己MHC-I抗体を経静脈的・経門脈的に投与し、組織学的評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臨床検体を使用しての、晩期における抗ドナー抗体と線維化との関連を証明した。 さらには、急性抗体関連型拒絶反応を発症した肝臓移植臨床症例での詳細な抗体及び組織解析、治療への反応性などを評価できたことは、今後の抗体関連拒絶反応に対する治療ガイドラインへの貢献が期待される。 また、免疫学的にリスクの高い小児劇症肝炎における肝移植の成績向上のための抗体関連拒絶反応対策としての局所療法の有用性について報告が完了した。 マウスを用いた検討では、in vitroにおける肝類洞内皮細胞とMHC抗体の反応による遺伝子の変化の解析が終了しており、その遺伝子発現の変化を臨床的に見られる組織学的変化の関係を今後の研究で明らかにする。
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Strategy for Future Research Activity |
動物実験におけるin vivoモデルの作成がやや困難な状況であるが、in vitroにおける遺伝子の解析は終了しており、引き続きin vivoにおける組織の変化と遺伝子発現にどのような関係があるのかを解析していく。 一方で、臨床データを利用しての解析は順調に進んでいる。今後は、臨床における免疫抑制剤の変更が、抗体価にもたらす影響をフォローし、組織学的変化への効果を観察する予定である。
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Causes of Carryover |
前年度は動物を利用したin vivoモデルの作成が予想に反して困難であり、一部研究計画を変更して研究を遂行している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度はヒト臨床検体を使用した検体採取と解析を中心に研究を行う方針である。 ヒト肝移植患者検体測定数を増加させ、かつ経時的なデータを採取することにより、前年度未使用額を使用する予定である。
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