2015 Fiscal Year Research-status Report
ジルコニアおよびチタン上培養細胞における骨芽細胞分化能の比較
Project/Area Number |
15K21457
|
Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
斉藤 まり 鶴見大学, 歯学部, 学部助手 (60739332)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 歯周組織再生 / 歯根膜 / インプラント / 骨芽細胞分化 / ジルコニア / チタン / 株化 / 細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は歯周組織の再生治療や歯根膜付きインプラント開発における細胞ソースおよび歯(歯根)の代替材料を模索するため、優れた生体適合性と機械的強度を有するジルコニアをインプラントフィクスチャー(歯根部)として応用し、培養細胞を用いて生体適合性や骨芽細胞分化能について検討することを目的としている。 (インプラント体について) オッセオインテグレーションを生体内で形成する材料の代表はチタンであり、生体親和性は高いが埋入後の生体アレルギー反応や審美面から新たな材料が要求されている。本研究では、アレルギー反応が起こりにくくチタンに近いオッセオインテグレーションを形成することから注目されているジルコニアのうち、性質に優れるセリア系ジルコニア/アルミナ複合体に着目した。セリア系ジルコニア/アルミナ複合体をディスク状に加工後、細胞をディスク上で培養し培養条件や分化条件を検討し生体に対する適合性があることを確認した。 (細胞について) 本研究はin vitroでの骨とインプラント体のオッセオインテグレーションを想定し、細胞を骨芽細胞へ分化させ、試料上に石灰化物を形成させた。骨芽細胞分化のための細胞ソースとして、本研究ではより歯周組織に近似させることを考慮し、ヒト歯根膜細胞を選択した。また、骨芽細胞分化のために一定の性質を必要とすることから、細胞の不死化条件を検討し、細胞に遺伝子導入し細胞を株化した。遺伝子導入により細胞分裂回数の増加、安定的な遺伝子型の維持、表現型の安定がみられた。骨芽細胞分化では、分化誘導による石灰化の指標であるアルカリフォスファターゼ活性値の上昇、石灰化物の形成等が表現型として求められることから、それらの発現を確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2014年発表の論文(Saito M, Karakida T, Yamamoto R, Nagano T, Yamakoshi Y, Hayakawa T, Oida S and Gomi K. Differentiation potential of osteoblast from cultured C2C12 cells on zirconia disk. Dent Mater J. 2014;33(2):275-83.)では、セリア系ジルコニア/アルミナ複合体上でマウス筋芽細胞を培養し、骨芽細胞分化を誘導し性質を確認した。 (インプラント体について) 本研究では引き続きセリア系ジルコニア/アルミナ複合体とチタン、さらに歯科臨床で多く用いられているイットリア系ジルコニアとも比較し、どの試料上においても細胞は発育・増殖し、骨芽細胞分化が起こることが判明した。 (細胞について) ヒト歯根膜細胞の株化のため、細胞に遺伝子導入し不死化させた。加えて、分化誘導条件を調整し、ヒト歯根膜細胞を骨芽細胞様に分化させる条件が明らかとなった。骨芽細胞分化においてグルココルチコイドのひとつであるデキサメタゾンを添加する培養系については多数報告があるが、本研究では活性型ビタミンD3およびトランスフォーミング増殖因子(TGF)-β1を使用し、分化誘導を行った。この方法により石灰化物が形成され、骨芽細胞への分化が認められた。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は上記の結果に基づき、歯周組織再生や歯根膜付きインプラント開発を視野に入れ、引き続き基礎的実験を進めていく。 (インプラント体について) オッセオインテグレーションのメカニズムの解明は基礎・臨床の両面から強く求められており、チタンにおいてはいくつか報告があるが、ジルコニアでの報告は少ない。各試料表面に吸着する骨性タンパク質、イオンの動態や骨-インプラント体界面の構造確認、接着分子の発現など各試料について検討したい。 上記の基礎的なデータを取り入れ、マウスへインプラント体を埋入し骨との親和性をin vivoから検討し、基礎研究へフィードバックしたいと考えている。 (細胞について) 骨芽細胞分化について検討を行ったが、ビタミンD3とTGF-β1を用いた報告は少ない。生体内に存在する活性物質での分化誘導は、生体内での反応により近いとの観点から、合成ステロイドであるデキサメタゾンを使用しない培養系として、今後さらに検討することで歯根膜という特殊な組織のメカニズムの解明に関与することが示唆された。また、株化した歯根膜細胞については、細胞培養や分化誘導にあたって性質が把握できていて結果の予測が比較的行いやすい細胞を安定して供給できることから、本研究で作製した株化細胞は多数の研究に応用することが可能であり、今後発展させていくべき意義があると考えられる。
|
Research Products
(1 results)