2015 Fiscal Year Research-status Report
メタルフリーの有機化合物を利用した電気化学キャパシタ電極の超高容量化
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15K21478
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Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
糸井 弘行 愛知工業大学, 工学部, 准教授 (40648789)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 電気化学キャパシタ / 多孔質炭素 / 活性炭 / 電気二重層キャパシタ / レドックスキャパシタ / メタルフリー |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度では電極材料を合成するため、酸化還元反応を示す金属を含まない有機化合物として2,5-ジクロロベンゾキノン(DCBQ)と2,5-ジクロロフェニレンジアミン(DCPDA)を用いて多孔質炭素への高分散化を検討した。これらの化合物の特徴は、プロトン酸性中で酸化還元反応するときにプロトン化・脱プロトン化されて電気的に中性を維持するため、イオン化して対極に引き付けられて多孔質炭素の細孔外へ脱着するのを防ぐことができる。また、いずれも2電子酸化還元反応を行うためにエネルギー密度が高く、疎水性が高いためにプロトン酸性の電解液への溶出による脱着が起こり難い。多孔質炭素には多孔性のカーボンブラックであるケッチェンブラック(KB)をはじめ、水蒸気賦活炭やKOH賦活炭などの活性炭を用いて電極材料の合成を行った。表面積1340m2/gのKBを用いた場合では、DCBQとDCPDAを吸着させることで、それぞれ最大で60wt%と50wt%になるまでKBに吸着させることができた。また、最大まで吸着させた試料のみならず、DCBQとDCPDAにおいて5、20、40wt%の吸着量になるようにそれぞれ試料を合成した。いずれの試料においてもX線回折測定では錯体由来のシャープなピークは全く示さず、細孔内で凝集することなく高分散させることができた。また、透過型電子顕微鏡による試料の観察においても凝集物が全く無く、DCBQとDCPDAが高分散していることを直接観察した。 これらの試料の電気化学測定を行った結果、KBとDCBQとの複合体ではDCBQが最大吸着のときよりも吸着量が40wt%の方が高い容量を示し、その値は239F/gであった。それでもこの試料においてはサイクリックボルタンメトリーによる測定から、吸着されたDCBQの約半分しか酸化還元反応を示していないことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電極材料の合成においては、多孔性のカーボンブラックや活性炭などの多孔質炭素担体に酸化還元反応を示す2,5-ジクロロベンゾキノン(DCBQ)と2,5-ジクロロフェニレンジアミン(DCPDA)を凝集することなく高分散できたことを透過型電子顕微鏡で直接確認した。したがって我々の合成手法を用いることによってさまざまな化合物を多孔質炭素に高分散できることが分かった。 多孔質炭素担体にDCBQやDCPDAを様々な担持量で複合化した試料から作製した電極を用いて電気化学測定を行ったところ、多孔質炭素に吸着した化合物が全て酸化還元反応を示しているとは限らず、それぞれの担持量によって何パーセントの化合物が酸化還元反応を示しているかが大きく異なることが分かった。多孔性のカーボンブラックであるケッチェンブラック(KB)とDCBQの複合体ではDCBQの利用率は担持量によって20~50%であることが分かった。 一方、DCBQを数種類の活性炭に最大限まで吸着させた試料の電気化学キャパシタ特性を評価したところ、同じ最大吸着であるにも関わらずDCBQの利用率は1~50%と大きく異なる結果を示した。これらの結果は多孔質炭素の種類やDCBQの担持量を制御することによってDCBQの利用率をさらに増加できることを示唆している。 本研究で合成した電極材料は酸化還元反応過程でイオン化しないために10000サイクルの充放電を行っても容量の低下は非常に小さく、有機化合物を多孔質炭素に吸着させただけでも長寿命を達成できることを示した。また、充放電速度を50mA/gから1000mA/gまで増加しても容量が大きく低下することはなく、酸化還元反応が極めて素早く起こっていることが分かる。以上の結果から、本研究から得られた電極材料が優れたパワー密度と寿命特性を示すことが分かった。以上の結果は研究計画通りに順調に進んでいるものといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の実験結果から、多孔質炭素担体の種類を変えただけでも吸着した有機化合物の何パーセントが酸化還元反応を示すかが大きく異なることが分かったため、多孔質炭素の種類と担持量、有機化合物の種類を変えることによっていかにエネルギー密度を増加できるかを検討する。平成27年度では本研究手法によって合成した試料が優れた急速充放電特性(高パワー密度)と長寿命特性を示すことが分かっているため、平成28年度はエネルギー密度の増加に向けた多孔質炭素の種類と有機化合物の種類、そして担持量の最適化の検討のみに注力して研究を行う。特に多孔質炭素が有する2ナノメートル以下のミクロ孔や2~50ナノメートルのメソ孔の割合は多孔質炭素の種類によって大きく異なるため、これらの細孔構造と電気化学キャパシタ特性との相関がどのようになっているかを明らかにする。多孔質炭素にはミクロ孔とメソ孔の割合の異なる水蒸気賦活炭やKOH賦活炭などの活性炭を数種類選んで検討を行う。また、2,5-ジクロロベンゾキノン(DCBQ)や2,5-ジクロロフェニレンジアミン(DCPDA)以外にもプロトン酸性中でイオン化しないTEMPOなどのニトロキシラジカルなども電極材料に用いることができるため、これらの化合物と様々な多孔質炭素を用いて電極材料を調製する。電気化学測定には定電流充放電のみならず、吸着した有機化合物の酸化還元反応を詳細に評価するためのインピーダンス測定を行い、有機化合物の利用率との相関関係を見出す予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度の予算は研究計画通りにほぼ全て使用したが、わずかに残った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
わずかに残った次年度使用額を平成28年度分と合わせて研究計画通りに使用する。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Pseudocapacitance of Zeolite-Templated Carbon in Organic Electrolytes2015
Author(s)
Khanin Nueangnoraj, Hirotomo Nishihara, Takafumi Ishii, Norihisa Yamamoto, Hiroyuki Itoi, Raúl Berenguer, Ramiro Ruiz-Rosas, Diego Cazorla-Amorós, Emilia Morallón, Masashi Ito, Takashi Kyotani
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Journal Title
Energy Storage Materials
Volume: 1
Pages: 35-41
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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